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第105話
11ー4 寝たふりですか?
森の夜は、寒かった。
春とはいえ、まだ震えるように寒くって、俺たちは、火を囲んで寄り添うように暖をとりながら眠っていた。
どこかで何かわけのわからない生き物の叫ぶ声が聞こえるし。
俺は、少しうとうとした後、ふと、誰かの話し声に目が覚めて灯りの方を見た。
そこには、クーランドとグレイシア兄弟の姿があった。
どうやらクーランドが火の番をしているところへグレイシアが起き出してきたようだった。
しばらく2人は、俺の知らない言葉で話をしていた。
ドワーフの言葉かな?
まるで、知らない人のようで。
俺は、ちょっと複雑な気持ちになっていた。
しばらくして、グレイシアが唐突に話し出した。
「お前、セツ、のことを、愛し、ている、のか?」
はい?
俺は、驚いて横たわったままグレイシアのことを見た。
グレイシアは、ドワーフにしては繊細な顔立ちをしていたが、やはり、渋いおっさんだ。
うん。
おっさんとおっさんが火を囲んで恋ばなしている?
でも、俺は、胸が高鳴るのを感じていた。
クーランドは、なにやら思い悩んでいるような顔をしていたが、やがてグレイシアの問いに応じた。
「愛しているかどうかは、わからん。だが、俺は、あいつのことが好きだ。守ってやりたい」
どきん、と俺の心臓が跳ね上がった。
グレイシアは、そうか、と短く頷くとクーランドの方を見つめた。
「なら、お前は、もう、この世、のもの、ではない、と思うこと、にしよう」
グレイシアは、クーランドに告げた。
「これから、この方が、歩む道は、修羅の、道だ。クーランド、お前は、この方の、ために、懸命に、戦って、戦って、そして、この方の、ために、死ぬが、いい」
「ああ」
クーランドは、こくりと頷いた。
「そうするつもりだよ、兄さん」
マジですか?
俺は、クーランドの言葉の重さに胸が震えるのを感じていた。
と、そのとき、俺の腹がぐぅっ、と鳴った。
ほわぁあっ!
俺は、2人の視線を感じてぎゅっと目をつむった。
何?
このタイミングで腹が鳴るとか!
俺は、必死に寝たふりをしていた。
グレイシアがクスッと笑った。
「セツ、今から、教会の、子供たちに、もらった、ルリの実を焼く、が、お前も、食べる、か?」
バレてる?
俺は、一呼吸おいて起き出した。
「・・食う」
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