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第107話

 11ー6 賭け  「ロイは・・ロイのことは、もう、いいんだ」  「セツ?」  「本当、俺がバカだったんだ」  俺は、自嘲ぎみに笑った。  「男同士なのに、ちょっと優しくされただけであんなことになるなんて、俺、どんだけちょろいんだか。その・・とにかく、あれは、なし!ノーカウントだからっ!」  「無理すんなよ、セツ」  クーランドがぽつりと口を挟んだ。  「お前、気の迷いとかで男とどうこうなるような奴じゃねぇだろ?」  「そ、それは!」  俺は、口ごもった。  あれは、女神の陰謀だったんだ。  俺は、そう思いたかった。  俺は、常に無理やりされているんであって、決して自分から望んで体を開いているわけではない、筈だ。  だけど。  俺は、ふぅっと吐息を漏らした。  「何にせよ、ロイを傷つけるつもりなんて、俺には、なかったんだ」  ロイ。  俺のピンチを救ってくれた。  それに俺の腹の子供の父親になるとか言ってくれたし。  俺を。  暖かく抱き締めてくれた。  ロイは。  俺は、涙がこぼれるのを止められなかった。  「こんな、ところで、泣くな、セツ」  グレイシアが俺の肩にそっと手を置いた。  「お前が、泣くのは、奴の、腕の中、で、だろ?」  マジですか?  俺は、かぁっと頬が熱くなるのを感じていた。  グレイシアがにっ、と笑った。  「賭ける、か?セツ」  「何に?」  俺は、涙を拭いながらきいた。  グレイシアが俺に告げた。  「ロイザールが、お前の、ことを、見捨てない、ということ、に、だ」   はい?  俺は、グレイシアのことをじっと凝視した。  「何、言って」  「奴は」  グレイシアがきっぱりと言い放った。  「お前の、ため、なら、世界を、敵に回しても、いい、と思っている。間違い、なく」  「そんなわけが」  「要するに」  グレイシアが俺に微笑んだ。  「奴は、お前に、夢中、だってこと、だよ」  「そんなこと、あるわけが」  言いかけた俺の口の中にグレイシアがルリの実を入れてきた。  グレイシアは、モグモグしている俺ににやっと笑った。  「だから、お前たち、は、男を、知らない、というんだよ」  グレイシアの自信満々な顔に、俺は、ムカついていた。  「なら、賭けようぜ!」  

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