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第110話
11ー9 どっこい生きてた!
「ふわぁっ!」
俺たちは、かつての領主の屋敷の前に来て、その光景に驚きの声を漏らしていた。
うん。
もと領主の家が普通の貧乏っぽい家だってことにも驚いたんだけどね。
それよりも、その家を囲むようにずらりと並んでいる馬車に積まれたままの品々に驚いていた。
「どうやらロイザール様からの贈り物のようなのですが」
困惑した様子でストラファくんが俺たちに話した。
「みなさんがお着きになる3日ほど前に使者の方々と到着されまして。量が量ですから、どうすることもできずにこのままにしているのですが」
俺は、荷物を前にして感動していた。
マジで贈ってくれたんだな、ロイ。
「セツ!」
名を呼ばれて俺は、振り返った。
そこには、見覚えのある赤髪の姿があった。
「ロイ?」
「来たぞ!セツ」
ロイは、俺に駆け寄ると俺を抱き上げた。
「もう、逃がさん。お前が拒もうとも、お前は私のものだとその体が覚えるまで離さない」
マジですか?
そのとき、俺たちの背後から不意に影が飛び出してきた。
「感動の再会かいな?」
「お前は!」
幽霊を見たような俺の反応にそのキツネ耳の美少女は、不思議そうな顔をした。
「あんたらの到着に間に合うように思うてな」
そこには、死んだと思っていたメサイアの姿があった。
俺は、マジで驚いていた。
「お前、生きてたのか?」
「なんで、うちが死んだと思うとるのかがわからへんわ」
メサイアの突然の乱入にロイや、アルバートおじさんたちに緊張が走った。
俺は、みんなにメサイアを紹介した。
「あー、こいつは、俺の使い魔であるクダギツネのメサイアだ」
「クダギツネ!」
ストラファくんが身構えた。
「はやく、退治しなくては、こんな町の中にまで侵入を許してしまうとは!」
「大丈夫、だ。こいつらは、味方になったんだ」
俺の言葉にメサイアがにまっと笑った。
「せやで。その明かしにお土産もって来たったんやで!」
「お土産?」
俺が訊ねると、メサイアは、空間から巨大な猪のようなものを取り出した。
「これで、あんたらの着任祝いでもしたろ、思うてな」
「騙されてはいけません、セツ様!」
ストラファくんが叫んだ。
「こいつらは、信用ならない女狐です!」
「あんたらは、こいつらを捕らえて売り飛ばしてたらしいな?」
俺は、みんなに聞こえるように大きな声で宣言した。
「このクダギツネをこの地に受け入れることにした。もう、クダギツネを捕らえて売ってはいけない。クダギツネも悪さをするな!」
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