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第111話

 11ー10  宴です!  俺たちは、急遽、全町民を広場に集めると肉を振る舞うことにした。  半信半疑で集まってきた人々に、広場の中央で焚いている炎であぶった猪もどきの肉の刺さった串をクダギツネと俺の仲間たちが配っていった。  「どうぞ」  メサイアたちがにっこりと微笑みながら、ロイの荷につまれていた樽に入ったビールによく似た爽やかな発泡酒であるマハトの入ったグラスと肉汁滴る焼き肉の串を手渡すと、さっきまで絶望に沈んでいた男たちの目に光が射してくるのがわかった。  「今日は、みんな、集まってくれてありがとう」  俺は、従僕のダイさんたちが用意してくれた台の上にのって、咳払いをした。  「俺は、これから当分の間、この地を治めることになるセツ・ナカタだ。よろしく頼む。とにかく、この地をもっと住みやすい土地にしていくつもりだ。あと、クダギツネもこれからは、俺たちの仲間だ。彼女らは、俺の使い魔になった。もう、勝手に売り飛ばしたりはするな。もし、それを発見したときは、そいつのことを遠くのどこかの海辺にでもすてにいくからな。わかったか?」  そして、そのまま、俺たちは、宴に突入した。  町の人々は、久しぶりの新鮮な肉と肉にまぶされている塩やら香辛料やらの味に舌鼓を打った。  肉は、クダギツネの提供だったが、塩とかは、ロイからの贈り物の中に入っていたものだった。  とてもたくさんの種類の、おそらくこの世界では貴重なものなのだろう香辛料を肉にどんどん惜しみなく擦り込んでいく俺に、従僕のダイさんたちや、ワチさんがため息をついた。  いや。  俺も、少しは、考えてるんだよ。  俺には、女神がくれたスキルの福袋があるからな。  その中には、スマホ女神いわく一度口にしたものを再現できるという創造のスキルがあった。  俺は、全ての香辛料を一舐めしつつ下味をつけていった。  これで、どの香辛料も再現できるわけだった。  俺が下味をつけた肉をクダギツネたちが串に刺して火で炙って人々に配っていく。  最初は、お互いにお互いを警戒していた彼らも、宴が盛り上がっていくにつれ心を開いていっていた。  クダギツネも人間もかまうことなく共に踊り、歌い、楽しんでいた。  俺は、肉の調理をすませると一息つくために人だかりから離れた広場の片隅に行き、そこに腰をおろして肉を味わいながら、酒の苦手なクダギツネたちが分けてくれた果実水を飲んでいた。  「すごいな、あなたは」  背後に人の気配を感じて俺が振り向くとそこには、ストラファくんが立っていた。  「あっという間にこの絶望の町を希望に目覚めさせてしまった」  「ああ。ほんとに希望があるからね」  俺は、肉をもぐもぐしながらストラファくんを見上げた。  「このトリムの町は、きっととっても裕福ないい町になるよ」  「ほんとに、きっと、そうなんでしょうね」  ストラファくんが俺の横に腰をおろした。  「私も、なんだか、楽しみになってきました」  はい?  俺は、ストラファくんの素直な笑顔に驚いていた。  「何が?」  「あなたが創る未来、がです」

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