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第115話

 11ー14 してません!  「えっと、2人とも?」  俺は、いつになく硬い声を発した。  「ちょっと起きてくれるかな?」  なぜか、2人ともびくっと飛び起きるとベッドの外へとおりて俺の前に正座した。  俺は、2人をお袋譲りの目の笑ってない笑顔を浮かべて見つめた。  「ちょっと、質問があるんですけど」  「なんだ?」  ロイが答えるが、なぜか、目が泳いでいる。  アルバートおじさんは、俺から目をそらした。  怪しすぎる!  俺は、2人に訊ねた。  「これは、どういうことですか?何があったのか、俺が理解できるように教えてくれますか?」  「ああ、それ、は」  アルバートおじさんがしどろもどろに話し出した。  「俺たちが話しているうちにお前は、眠ってしまったんだよ。その、なんか、苦しそうだったから、こっちのロイザール殿と協力して服を、ちょっと脱がしてやろうと思って」  「ちょっと?」  俺は、無邪気さを装ってきいた。  「俺、今、真っ裸なんですけど、これがちょっと?」  「いや、その」  2人がもじもじしているので、俺は、ずばっと訊ねた。  「2人とも、俺がねてる間に何もしてないよね?」  「「してません!」」  言いきった2人に俺は、ふん、とそっぽを向いた。  「信用できるかよ!」  「大丈夫ですよ、セツ様」  どこからか朝のお茶を用意して現れたワチさんが微笑んだ。  「2人とも牽制しあって昨夜は、何もしておられませんから」  「ふぇっ?」  俺は、ワチさんから熱いお茶の入ったカップを受けとりながら訊ねた。  「もしかして」  「はい」  ワチさんが頷いた。  「見ていましたとも、一部始終を」  マジですか?  ワチさんいわく。  寝落ちした俺をアルバートおじさんとロイは、2人で仲良く裸に剥いて、その横にもぐり込んだのだという。  だが、俺は、いっこうに目を覚ますこともなく。  そのうち、朝になってしまったわけだった。  うなだれている2人に俺は、深いため息を漏らした。  なんだろう。  もと勇者の剣聖と、最強の魔王がこんなにがっくりと肩を落として。  やろうと思えば、俺が寝てるうちにいたづらすることだってできたのに、2人は、そうはしなかった。  俺は、それが少し、嬉しかった。

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