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第120話
12ー4 新人魔王の初仕事
俺がぽかんとしているとアルバートおじさんが頭を抱えた。
「その無防備さ、どうにかならんのか?そのせいでいろんなものが引き寄せられているじゃないか!」
「はい?」
俺は、ハトマメでしばらく考え込んでいたが、やがて、ため息をついた。
「やっぱ、あれかな。女神の加護のせい。女神が俺に魅了の力を与えたからな」
「違うな」
どうやら荷物の確認を終えたらしいロイが食堂に入ってきて俺を背後からぎゅっと抱いて、髪に顔を埋めて俺の匂いをクンクン嗅いだ。
「お前自身のせいだ。この甘い香りには誰も逆らえない」
俺は、ロイにホールドされて匂いを嗅がれて、なんだかすごく恥ずかしくって。
「やめてくれよ、ロイ」
なんとかホールドから逃れようと抵抗したがダメだった。
俺は、ロイにぎゅっぎゅっと抱き締められて、鼓動が高まるのを抑えられなった。
体の奥から変なものがくる!
俺は、情けない声を出した。
「ロイ、も、やめっ!」
俺は、この日、他にもまだまだ予定があった。
ここで、ロイやおじさんとおかしくなるわけにはいかない。
俺は、なんとかがんばってロイから身を離した。
「2人に会わせたい人たちがいるんだ」
俺は、2人を連れて町外れの小さな小屋へと向かった。
その掘っ立て小屋のような場所は、この領地の警備を担当している兵士たちの詰所だった。
俺たちが入っていくと、グレイシアから連絡を受けていたらしい男たちが迎えてくれた。
「お待ちしていました、魔王様」
背の高いがっしりとした顔に傷のある熊の獣人らしい男が俺たちに椅子をすすめた。
「すみません。こちらから出向けなくって、わざわざ足を運んでいただいて。しかし、この季節、魔物の害が増えるものですから」
熊の獣人は、この兵士たちのことをまとめている隊長でマル・ナードといった。
ここには、今、彼の他には、副隊長の犬の獣人らしいドット・ヤードが残っていて俺たちにお茶をすすめてくれた。
だが、それは、お茶とは名ばかりの色つきの白湯のようなものだった。
「すみません。ここは、いつも財政難なもんで」
マルは、俺たちに申し訳なさげに頭を下げた。
俺は、にっこりと微笑んだ。
「わかってる。このトリムナードに財政難でないとこなんてないからな」
俺たちは、にやりと笑いあった。
「はじめまして、新しくここの領主になったセツ・ナカタです。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします、セツ様」
俺たちは、2人と順番に握手を交わした。
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