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第121話

 12ー5 マッドボア家畜化計画  「これから、あなた方の直接の上司は、このアルバート・グレイアムになります。あと、こちらの方は、当分の間、補助にきてくれることになっている魔王ロイザールさんです」  「ロ、ロイザール様ですと!?」  2人が驚きの声をあげて礼をとろうとするのをロイは、片手で制した。  「よい。堅苦しいことは抜きだ」  それから、俺たちは、マル隊長たちに部隊を2つに分けることなどを説明した。  2人は、ちょっと険しい顔をしたが、すぐにこちらの意見を受け入れてくれた。  その後は、アルバートおじさんとロイに任せて、俺は、家へと戻った。  「よかった。お客様がお待ちです、セツ様」  ワチさんが俺を執務室の隣にある応接室へと導いた。  そこには、ひょろっと背の高い額に2本のねじれた角のある青年が待っていた。  この人物は、俺が朝イチで1番近くにある冒険者ギルドに依頼をだしていた件で訪れていた。  「オーリ・ナシルです。オーリと呼んでください」  オーリは、この辺りではあまり見かけたことのない羊の獣人で、なんだか細くて頼りない印象の人物だった。  「あなたは、魔物の研究者だとか」  俺は、オーリに椅子をすすめながら話した。  「もしかして、冒険者でもあるんですか?」  「はい」  オーリは、俺の問いに頷いた。  「一応、生活のためにも、研究のためにも役に立つので冒険者もしています。ランクDの治癒魔法師です」  「そうなんだ」  俺は、今回の依頼の説明をした。  オーリは、黙ってきいていたが、俺の話が終わると一言訊ねた。  「魔物を領内で飼育するということですか?」  「飼育というか、牧場を作って育てたいんだけど」  俺は、答えた。  「マッドボアを家畜にしたいんだ」  「マジですか?」  オーリが頭を振った。  「魔物を家畜に?正気の沙汰じゃない。無理ですよ」  「なんで?」  俺が問うと、オーリは教えてくれた。  「まず、人のすむ場所に魔物を受け入れることは、不可能です。魔物の持つ障気に人間は耐えられない」  「なるほど」  俺は、頷いた。  「それは、問題ないと思う。牧場を造るのは、郊外だし」  「それに、魔物の狂暴性は、いくら優秀なテイマーでもなかなか抑えられないものですし」  「それも、なんとかするよ」  俺は、にっこり笑った。  「それより、家畜化した場合の利点を考えたい。俺は、マッドボアを二種類に分けるつもりなんだ。1つのグループは、主に雌。これは、繁殖とそれと乳を目的としたグループだ」  「乳、ですか?」  オーリは、驚いたように俺を見つめた。  「マッドボアの乳を食用にするんですか?」  「ああ」  俺は、続けた。  「2つ目のグループは、食肉にするための主に雄のグループ」  

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