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第123話
12ー7 魔法じゃないです。
家の前に全員が揃ったのを見計らって、俺は、転移呪文のアプリを起動した。
といっても、スマホの画面のアプリをぽちっとするだけだった。
すると。
一瞬、ぐらっと空間ごと揺れたかと思うと、目の前の風景がすごい勢いで流れていく。
世界が音もなく、すとんと嵌め込まれる感じがして、気がついたときには、見たこともない場所に俺たちは立っていた。
「これが転移魔法か・・」
オーリがすごく感慨深げに呟いたので、俺は、慌てて付け加えた。
「転移魔法かもしれないし、そうでないかもしれない」
「はい?」
怪訝そうなオーリに俺は、説明した。
「これは、正確には、魔法というより女神の力だからね」
それにしても。
俺は、辺りを見回してため息を漏らした。
「広い・・」
俺たちは、見渡す限りの荒野のど真ん中に立っていた。
ここが、トリムナードの領地のほとんどを占めるという荒れ地か。
俺たちは、ここで夜営をすることにした。
クダギツネの巣があった辺りなら彼らのところに世話にもなれるのだが、なにしろこの広さだ。
さすがのクダギツネも見当たらなかった。
俺は、ラクシア親子とクーランドたちに夜営の準備を任せて、少し、辺りを調べることにした。
土とか、生えている草とかは、どうやら俺のもといた世界のムーアと呼ばれる土地に似ているようだった。
生き物は、クダギツネからきいたことでは、小さな飛びネズミとかいうネズミがいるぐらいだということだった。
うん。
俺がしばらくオーリと2人で調べたところでは、何も問題のない土地のようだった。
近くには、小さな小川も流れていた。
ふわふわの青色のかわいい鳥の姿もあった。
俺は、スマホのクークルマップを起動すると今、俺たちのいる場所の周囲20キロ四方を線で囲むと、土地改良アプリを起動した。
『フラット』
俺がアプリを操作するとどん、という鈍い音が響き、地面が揺れた。
続いて、俺は、アプリの『エンクローズ』をポチッとした。
すると、今度は、地響きがして、俺たちのいる場所の周囲に二メートルぐらいの岩の壁が出現した。
「これは・・」
オーリが信じられないという表情で俺を見た。
「いったい、何をしたんですか?」
「女神の加護、だよ」
俺は、にやっと笑った。
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