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第124話
12ー8 サボテンもどき
俺は、岩壁に切り取られた場所を点検しながらオーリに訊ねた。
「あと、何が必要だと思う?」
俺が問いかけると、オーリは、少し考え込んでから答えた。
「マッドボアの主食は、肉です。ここでマッドボアを育てるとして、餌はどうされるつもりですか?」
オーリのいう通りだ。
俺は、スマホで検索した。
『マッドボア、家畜化、餌』
すると、スマホは、1つのアプリをおすすめしてきた。
それは、『パスカルくん』というなんの変哲もなさげなアプリだった。
インストールして開いてみる。
それは、植物を改良する機能をもったアプリだった。
俺は、アプリの指示にしたがっていくつかの特徴のある植物を選択していった。
その結果、動物性たんぱく質で構成された植物が設計された。
ダウンロードしようとするが、なかなか終了しない。
待ち時間、8時間となっていた。
俺たちは、四方を囲んでいる壁の一角に錬金術で出入り口を作って外へでた。
そして、夜営地へと戻ると、すでに夕食の準備ができていた。
「どうした?セツ」
クーランドが俺の額にそっと触れた。
「なんか、顔色が悪いぞ」
「うん?」
俺は、焚き火の側に腰をおろした。
「ちょっと疲れたかな?」
俺は、座り込むとそのまま眠りに落ちた。
翌朝、目覚めるとすぐに俺は、スマホを確認した。
『ダウンロード終了』
俺は、すぐにファイルを開いた。
すると、目の前に大きなサボテンのような植物が現れた。
そっとそのぽってりした葉っぱに触れてみると脈動が感じられた。
「おはようございます、セツさん」
オーリが草陰からひょっこりと現れた。どうやら、近くの小川へ顔を洗いにいっていたらしい。
「おはよう、オーリ」
まだ、眠っているクーランドたちを起こさないように小声で挨拶すると、俺は、腰につけた短刀を抜いて目の前のサボテンもどきの葉っぱを切り取った。
すると、切口から青色の液体が流れ出た。
俺は、傷口に血止めの軟膏を塗った。
すると、青色の液体は、じきに止まった。
「なんです、これ?」
オーリがきいてきたので俺は、説明した。
「マッドボアの餌にどうかと思って、創ってみたんだ」
俺は、切り取った葉っぱをオーリに見せた。
それは、まるで魔物の肉のようだった。
俺たちは、切り取ったサボテンもどきを火で焼いて塩をかけて朝食の代わりに食べた。
「うん、なかなかうまい!」
クーランドが声をあげた。
「これ、畑で育てたらいい食料になるんじゃね?」
「それも、ありだな」
俺は、うんうん、と満足そうに頷いた。
サボテンもどきは、さっぱりとした味わいの、鶏肉によく似た食感だった。
「これなら、マッドボアの餌にぴったりです、セツさん」
オーリの言葉に俺は、頷いた。
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