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第131話
13ー1 新しい町
俺たちがトリムナードへと着任してから3ヶ月の時が過ぎた。
このトリムの町は、この3ヶ月の間にすっかり変わっていた。
一番の変化は、やはりクダギツネたちが町にやってきたことだろう。
最初心配していたんだが、それも杞憂で、クダギツネたちは、持ち前のバイタリティーと、人当たりの良さで町にうまく入り込んでいた。
ある者は、商人となり店舗を経営し、ある者は、酒場やら宿屋やらを営み、町を活性化していった。
初め、クダギツネたちに反発していた人々も徐徐に警戒心をとき、彼らを受け入れていった。
トリムの町の男たちは、クダギツネたちと協力して町を盛り上げていた。
中には、クダギツネと結ばれる者も出てきた。
アルバートおじさんの話では、このノイスジーラ王国では、獣人と人間の婚礼は、珍しいものだったらしい。
というか、魔物が一緒に暮らしてるなんてあり得ないらしかった。
だけど、別に、いいんじゃね?
みんなが幸せなら、それでよかったのだ。
グレイシアは、町に教会を設立した。
うん。
半分以上は、スマホ女神の思惑をくんでのことだったが、残りの半分は、グレイシアの希望だった。
グレイシアいわく、
「すべての人の幸福のために尽くしたい」
そういいうわけで、グレイシアは、毎日のように、訪れるカップルのために結婚式を執り行い、女神の祝福を与えていた。
こういった感じで、トリムナードは、立ち直っていっていた。
始めは、死んだ魚のような目をしていた男たちも、だんだんと生きる希望をを取り戻していっていた。
おかげで俺の領地再生計画も順調にすすんでいた。
マッドボアの牧場のある辺りには、新しい町ができていた。
ラクシアを町長とした町は、キヌアの町と呼ばれた。
キヌアというのは、白狼族の言葉で『希望』という意味を持っていた。
キヌアの町は、今は、小さな牧場の町だが、俺は、これからに期待していた。
というのも、キヌアの町では、マッドボアからとれる乳で乳製品を産出するようになっていた。
この世界では、魔物の乳で製品を作ることどころか、魔物を飼育することじたいがあり得ないことだったからな。
キヌアの町で作られるチーズや、バター、ヨーグルトといったものは、とても珍しいものだった。
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