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第132話

 13ー2 エルフ  マッドボアは、繁殖率が高く、どんどん増えていった。  俺たちは、第2、第3のマッドボア牧場を作っていった。  それと同時に、荒地の開拓にも力をいれていった。  ロイのくれた麦の種をもとに『パスカルくん』で改良した、短期で成長し収穫ができる種を創り出し畑で栽培し始めた。  ここにも、また、新しい町ができた。  町の名前は、リルア。  『未来』という意味だ。  そして、変化は、もう1つ。  俺たちは、トリムナードの北にある海に面した場所で塩を作り始めた。  この世界においては、塩は、岩塩がほとんどで海水から塩を作るという方法は、まだ開発されてはいなかったので、これは、すごく画期的なことだった。  この海辺にも町を作り、そこは、ヌヌアの町と呼ばれた。  それは、『恵み』という意味を持っていた。  こうしてトリムナードの町は、ゆっくりとだが発展していきだしていたが、それにつれて不足していくものがあった。  それは、労働力だった。  もともとの住人の数が少なかったので、こればかりは、どうすることもできなかった。  中には、出稼ぎにでている女たちを呼び戻す者もいたが、そんなことでは解決できない。  トリムの町にその客人がやってきたのは、そんな折のことだった。  その一行は、クダギツネという異種族を受け入れているこのトリムナードにおいても異質な存在だった。  それは、森の人と呼ばれるエルフの一族からの使者だった。  彼らは、かつてから交流のあったというクダギツネを通して領主である俺に連絡をとってきた。  俺の家に来たエルフの一行の代表は、緑の髪と瞳をもつ少年だった。  「はじめてお目にかかる。私は、エルフの王の子で、ミオといいます。どうぞ、お見知りおきを魔王セツ様」  ミオは、俺に礼をとった。  ミオは、どう見ても12、3才の少年にしか見えなかったが、本人いわく、もう60才にもなるのだという。  ミオは、俺の姿を見て驚きを隠せなかった。  俺は、すでに臨月を迎えていた。  男でありながら大きな腹を抱えている俺に、ミオは、興味を示した。  何より、妊婦が魔王だということがっミオの関心を惹いていた。  「俺は、魔王の代理のようなもの、だ」  俺は、ミオに説明をした。  「本来の魔王となる者は、俺の腹の中にいるこの子だ」  「なるほど」  ミオは、頷いた。  「失礼ですが、父君は?」  ミオに訊かれて俺は、答えた。  「この子は、俺1人の子だ。父親は、いない」  

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