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第134話

 13ー4 予定日  俺も一応エルフの診察を受けることになった。  ワチさんいわく、俺は、もういつ子供が産まれてもおかしくない状態だそうだ。  だからというわけでもないのだが、俺は、エルフの往診を受けた。  俺を診察してくれたのは、使者としてこの町を訪れていたあのミオだった。  ミオは、外見は子供だったが、エルフの一族の中でも1、2の治癒師ということだった。  俺を診察したミオは、少し難しい顔をした。  「これは、常の妊娠ではありませんね、セツ様」  ミオは、自室のベッドに横たえている俺の大きな腹に触れた。  「しかも、本来の呪いとは、違う効果が現れている。そのためにこの子の成長には、尋常ではない魔力が必要とされている」  ミオは、俺のつき出た腹を優しく撫でた。  「あなたたち親子は、頑張ったようだな。どうやら、外部からの魔力の供給もうまくいっているようだし、もう心配はないでしょう。予定日まで、後1ヶ月といったところでしょうか」  「あと1ヶ月?」  俺は、それをきいて軽く恐慌をきたしていた。  もう、1ヶ月。  たった1ヶ月で、俺、出産しなくちゃいけないわけ?  俺は、不安で。  自然と体が震えてきた。  こわい。  ミオは、震えている俺の手をそっと握って、微笑んだ。  「大丈夫です、セツ様。怖がらないで。この子は、この世界に産まれてきたがっている」  「産まれてきたがってる?」  俺は、思わず声を荒げた。  「そんなわけがないだろう?だって・・」  俺の胸にこの世界に来てからのいろいろなことが去来した。  俺は、泣いていた。  号泣する俺の背を優しく撫でながらミオは、俺のとりとめのない話をただきいてくれた。  俺は、次第に落ち着いていった。  診察を終えたミオは、俺に何種類かの小さな瓶に入った軟膏を渡した。  「これを腹部に塗ってください。こちらのいい香りのするものは、全身に塗ってもらってもかまわないです」  俺は、去っていくミオを見送ると、しばらくベッドの上でたたずんでいた。  俺は、ため息をついていた。  あと、1ヶ月。  俺は、それに耐えられるのだろうか。  

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