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第135話
13ー5 長い1日
その日から俺は、入浴後にミオのくれた軟膏を塗ることを日課とするようになった。
それだけではなかった。
なぜか、アルバートおじさんとロイが俺の入浴に立ち会うようになっていた。
その度に、髪を洗ってくれたり、体を拭いてくれたりとかいがいしく俺の世話をやいてくれた。
俺は、恥ずかしかったけど、助かってもいた。
この体では、最近は、動きづらいこともあった。
けど、風呂は、俺の一番の楽しみだった。
2人は、とにかく俺を甘やかしてくれた。
風呂上がりには、2人で俺の全身にゆっくりと時間をかけていい香りのする軟膏を塗り込めてくれた。
いい香りに包まれて、優しくマッサージされて俺は、リラックスできるようになっていた。
俺は、ミオの指示で予定日の一週間前からは、安静にしていた。
仕事も、グレイシアたちに任せてくつろぐようにと命じられた。
常に、誰かが俺の側にいて、俺のことを見守ってくれていた。
それでも。
こわいものは、こわい。
子供がちゃんと産まれてくるのか。
そもそも男の俺に子供なんて産めるのか?
ふと気づけば俺は、ぐるぐるとそんなことばかりを考えていた。
だけど、そんな俺の側にアルバートおじさんとロイは、常に寄り添ってくれた。
腰が張るのを優しく撫でてくれたり、不安がる俺の手をそっと握ってくれたり。
ミオも、毎日、俺の様子を伺いに来てくれたし。
俺は。
なんだか、すごく幸せを感じていた。
このまま、今がずっと続けばいいのに。
だけど、そんな幸せも永遠には続かなかった。
陣痛は、予定よりも3日も早く始まった。
早朝に、俺は、ずんと重い痛みを感じて目が覚めた。
気がつくと、失禁していた。
毎日、一緒に眠っているアルバートおじさんとロイが俺の異変に気づいて、すぐにミオを呼びに使いを出してくれた。
2人は、ミオのくるまでに俺の体を拭き清め、服やシーツを取り替えてくれた。
何度も、俺の髪を撫でて大丈夫、と呟いてくれた。
俺は、ミオがくる頃には、少し落ち着いていった。
「さあ、始まりますよ、セツ様」
こうして、俺の一番の長い日が始まった。
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