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第138話

 13ー8 行方不明ですか?  開腹された後、俺は、何度も心臓が止まったらしい。  ミオが懸命に治癒の術をかけ、その上に、グレイシアも、光魔法で俺を癒してくれたのだという。  「もう、容態が落ち着くまでの一週間の間は、エルフの治癒師が交代で付きっきりでお世話させていただきました」  マジか?  「1週間?」  俺は、ぽかんと口を開けてミオたちを見つめていた。  「俺、1週間も寝てたの?」  「いえ」  ミオが頭を振った。  「もう、セツ様は、1ヶ月の間、眠っていました」  はい?  俺は、俺を抱いてはなそうとしないロイに問いかけた、  「ほんとに?」  「ああ」  ロイが頷いた。  俺は、身にまとっていただっぷりとした夜着のすそをまくって、腹部を見た。  俺の腹部には、大きな切り口が残されていた。  といっても、もう、うっすらと赤い筋が残っているだけだったけどな。  「もう、大丈夫だって」  俺は、ロイの膝の上から下りようとして、ぐらり、と体が傾ぐ。  すぐに、ロイが俺を抱き止め、そして、再び、膝の上へと抱きあげた。  「わかったか?まだ、お前は、体が戻っていないんだ。大人しくしてろ!」  「ほえっ?」  俺は、助けをもとめてグレイシアの方を見た。  「でも、ほら、赤ちゃんの世話もしないと」  俺がそう言った瞬間に、その場が水を打った様に静かになった。  ミオも、グレイシアも、目をそらせる。  ええっ?  俺は、声が震えるのを堪えることができなかった。  「赤ちゃん、は?」  「大丈夫、だ」  ロイが俺を抱く腕に力を込めた。  「元気な男の子だ」  「マジで?」  俺は、ミオに訊ねた。  「俺の赤ちゃんは、どこ?会いたい」  「それは・・」  ミオが口ごもる。  どういうこと?  俺は、恐る恐るきいた。  「なんで?会わしてくれないんだ?」  「違う」  ロイが俺をぎゅっと抱き締めて告げた。  「会わせられないんだ」  はい?  俺は、ロイをじっと見つめた。  「なんで?」  「赤ん坊は、ここには、いない」  ロイが俺をあやすように囁いた。  「俺たちの赤ん坊は、行方不明なんだ」  なんですと?  俺は、ふっと目の前が暗くなるのを感じていた。  

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