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第147話

 14ー4 聖女と悪役令嬢とその息子  「エイダスの復讐の対象は、勇者アルバート・グレイアムだけではなかった」    エイダスは、聖女カーミラと、追放されたクレアの元婚約者であった聖騎士であり、その時には、すでに王位についていたルイズ・ノイスジーラとの間を言葉巧みに取り持つと2人を結婚へと導いた。  最初、2人の結婚には、みな、快い思いを持たなかった。  それは、侯爵令嬢であったクレアのことを陥れて王をたぶらかしたという印象を臣下や、国民たちに与えていた。    「クレア様は、聖女にこそ選ばれなかったものの、国民たちにも慕われた立派な令嬢でした」  スィラは、深いため息をついた。  「エイダスは、ゆっくりと私の母である聖女カーミラの心を侵食していきました」  どんなに努力をしようとも、クレアには、敵わない。  王の真実の愛も、国民や臣下の心も、自分には得られない。  そう、エイダスに思い込まされたカーミラは、次第にエイダスに支配されていった。  希代の悪妃となっていったカーミラはを通して王であるルイズをも支配するようになったエイダス。    「だが、エイダスの心を蝕む憎しみは、おさまることがなかった」  スィラが、俺のことを見つめた。  「スィラの次の標的は、あなたでした。セツさん」    エイダスは、異世界に追放したお袋のことを忘れなかった。  常に、奴は、お袋のことを追っていたのだという。  そして、奴は、異世界で幸せに暮らしているお袋に憤りを覚えた。  うん。  エイダス的には、うんと不幸になればいいと思っていたんだろうけど、それに反して異世界に追放されたお袋は、親父に出会い、幸せな家庭を築いていたからな。    「そして、彼は、あなたを見いだしたのです、セツさん」  スィラが俺を見つめた。  「クレアによく似たあなたをこの世界に召喚し使い魔を生み出す依り童として地下牢に鎖で繋ぎ、性奴として飼う。それが、彼の計画でした」  しかし、エイダスは、その計画を変更することを余儀なくされる。    「それは、あなたが魔王の星を持つ者だったからです」  エイダスは、俺を自分と同じ闇に堕とし、俺を利用してこの世界を滅ぼそうと考えた。    「そのためには、まず、あなたを地獄へと堕とす必要がありました」    エイダスは、俺を召喚し、この見知らぬ地で屈辱にまみれさせ、どん底まで堕とすつもりだった。  だが、ロイが、そして、スマホ女神の介入があり、エイダスの思惑通りには、事は進まなかった。  

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