157 / 167
第157話
15ー3 祈り
「お前も、私を見捨てるのか?あのときのアルバートや、カーミラ、ルイズのように」
エイダスは、俺の腕の中で精を吸いとられながら慟哭した。
「お前の、母のように、クレアのように、俺を捨て去るのか!」
ええ?
俺は、エイダスの冷たい青い瞳を覗き込んだ。
エイダスの濡れた瞳は、空虚で。
俺は、ぞっとしていた。
エイダスが、地の底から響くような声で叫んだ。
「誰も、私を、私を救いはしない!」
誰も!
エイダスの気が途切れていく。
俺は。
スキル『ビッチ』の裏技である『吸精の器』を解除した。
ふいに、俺からの圧から解放されたエイダスが、キョトンとした様子で俺を見つめた。
「セツ?」
「こんなの、違う」
俺は、エイダスを抱き締めた。
忘れ去られて、置き去りにされている幼子のような目をした男を。
「こんなこと!」
「セツ・・」
涙を流しながらエイダスは、俺の体を穿ち続けた。
じゅぶじゅぶ、と奥まで貫かれて、俺は、激しさに何度も気をやった。
「~!あっ、も、だめぇっ!」
「セツ、セツ!」
エイダスが俺の奥へと熱いものを放った。
その瞬間に、俺のものを戒めていたリングが外れ、俺は、勢いよく精を放った。
「あぁっ!」
「セツ!」
俺は、エイダスに抱き締められたまま意識を手放していた。
「ここは?」
俺は、気がつくとなんだか懐かしい匂いのする場所にいた。
ええっ?
俺は、周囲を見回した。
水音がして。
草の匂いがする。
そこは、俺の実家の近くの河原だった。
「なんで?」
「目覚めたか?セツよ」
大きな岩の上に1人の少女が腰掛けて俺を見下ろしていた。
「ここは、お前の魂の記憶の場所だ、中田 セツよ」
その美しい人は、俺に微笑みかけた。
「闇に堕ちたエイダスの魂を救うとは、なかなかやる。お前を選んだフローディアは、腐っても女神の端くれだったといいうことか」
「あなたは?」
俺は、その人に訊ねた。
「何者なんです?」
「私は、アルトディア。この世界を滅ぼそうとしている者、だ」
はい?
俺は、もう一度、その少女を見た。
儚げな横顔。
どこか、疲れた子供のようなその少女は、俺には、悪神には見えなかった。
「あの、お噂は、かねがね」
俺は、緊張していた。
「この度は、なんで俺のところへ?」
「お前が祈ったからではないか、中田 セツ」
ともだちにシェアしよう!