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第161話

 15ー7 女神との約束  俺は、ロブを受けとりながらそっとロブの頬にキスをした。  ロブは、きゃっきゃと笑って、俺に抱きついてきた。  「ロブ、いい子にしてたのか?」  「だぁだ!」  ロブは、ご機嫌さんで俺に手に持っていた桜花の枝を差し出している。  美しい桜花の花枝をもらって俺は、にっこりと微笑んだ。  「ありがとう、ロブ」  「だぁっ!」  破壊的にかわいらしいロブの笑顔に俺は、もうメロメロだった。  まあ、ロブにメロメロなのは、俺だけではないけどな。  エイダスもまた、ロブに夢中だった。  「父様の方にもおいで、ロバート」  「ちっちぃ!」  ロブは、エイダスへと手を差し出してい、エイダスは、それを愛おしげに抱き締めた。  ワチさんたちの後ろからロイとアルバートおじさんが顔を出した。  「セツ、今、グレイシアたちが王都から戻ったぞ」  「そうか」  俺は、頷いて、ロイたちの方へと歩みよった。  「成果は?」  「王都の商業ギルドの連中は、うちの塩をすべて買い取りたいといってる」  それは、俺の予想通りの反応だった。  「クーランドたちは?」  「今、部屋で旅装を解いてる」  クーランドとグレイシア兄弟は、トリムナードを代表して王城へと税を納めるためにこの1ヶ月ほどの間、領地を留守にしていた。  「二人とも変わりないか?」  俺が問うと、ロイが優しく笑った。  「あの二人も、お前が変わりないかときいていたよ」  「ああ?」  俺は、ゆったりとした上着に包まれた腹をそっと撫でた。  ここには、今、2人目の命が宿っている。  父親は、エイダス。  あの日。  エイダスに抱かれた夜に身ごもった子だった。  あの夜。  ノイスジーラの悪役宰相であったエイダス・フロウは、死んだ。  生まれ変わったエイダスは、宰相の職を辞して、どこかへそっと姿を消そうとしてしていた。  だが、俺は、それを許さなかった。  「この子を父親のいない子にするのか?」  俺は、やっと取り戻した我が子を見せてエイダスに迫った。  いや。  ほんとは、父親は、たくさん候補がいたんだが、でも、俺は、やっぱりエイダスにも残って欲しかった。  なぜなら、それが女神はアルトディアとの約束を果たすことになると思ってからだった。  アルトディアは、告げたのだ。  俺にすべてを解決するための時間を与えてやると。  こんなことで女神の投げ掛けた謎を解けるとは思えない。  だが、エイダスを見捨てることは、絶対にしてはならないと俺は思っていた。  それが、俺に与えられた課題の1つなのだ。  女神は、俺に時間をくれた。  この世界を変えるための時間を。  ならば、俺は、それを無駄にすることは許されない。    

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