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第165話
16ー1 ここでですか?
俺がお袋と連絡をとった夜のことだった。
俺は、領主の屋敷の執務室で1人、遅くまで書類に目を通していた。
どこからか、まだ音楽が流れていてなんだかいかにも祭りの夜という感じで、俺は、知らず知らずのうちに口許を緩ましていた。
いい夜だ。
俺は、いつしか昔好きだった歌を口ずさんだりしていた。
「ご機嫌だな、セツ」
ドアが静かに開いてロイが姿を現した。
俺は、ちらっとロイの方を見てから、再び、書類へと目を戻した。
「なんの用だ?ロイ」
「お前が今歌っていたのは、お前の故郷の歌なのか?」
ロイは、俺の背後へと回ってくるとおれの耳元で訊ねてきた。
俺は、頷いた。
「そうだよ」
俺は、平静をよそおっていたが、頬が熱くなり、胸は高鳴っていた。
ロイは、俺を背後からぎゅっと抱いた。
「なぁ、セツ。今からお前のことをとろとろになるまで抱いてもいいか?」
はい?
俺は、とくん、と心臓が跳ねるのを感じていた。
俺の2度目の妊娠がわかってからというもの、俺は、誰とも寝ていなかった。
というのも魔核を用いずに男が子を身ごもるということは、この世界でもあり得ないことだったからだ。
ミオは、何が起こるかわからないからといって、俺の体調にすごく神経質になっていた。
そのせいで夜の営みは、禁止されていたのだった。
俺は、ロイに小声で告げた。
「でも、ミオが」
「ミオには、関係無い」
ロイが俺の首もとへと噛みつくようにキスをしてくる。
すごく切羽詰まった様子のロイに俺は、ちょっと悩んだけどふぅっとため息をついた。
「一回だけなら」
「わかった」
ロイは、すぐに俺を抱き上げると執務室のテーブルの書類を押し退け、俺を机の上に押し倒した。
「ええっ?ここで?」
俺が抗議すると、ロイは、俺に覆い被さりながら囁いた。
「ダメか?セツ」
「ダメじゃないけど」
俺は、ロイに上半身を暴かれて吐息を漏らした。
「ここ、壁が薄いし」
そう。
俺の寝室の壁は、防音効果が高い。
「それにここだと、いつ誰がくるかもわから」
俺が言うのをロイは唇で封じた。
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