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第18話
それから甘酒をよく冷まして飲み、新年の豪勢なオブジェの写真を撮った。
雪がフーフーと甘酒を冷ましている間、直はぼーっとしていて何を考えているのかわからない。昔からだ。
けれど雪がオブジェの写真をニンスタに上げようとすると、直は「俺も撮る」と下手くそなカメラワークで写真を撮った。
やはりよくわからない。
雪は甘酒もおみくじも写真を撮ったが、そこでは無反応だったくせに。
直とこういうイベント事を楽しむことは滅多にない。
こうして初詣に誘われイベントに参加する直はレアで、そこでの振る舞いのノーマルも知らない。
だが直がなぜそんなことをするのかを考えると、なんとなーく、付き合いの長い雪は答えがわかる。
「ナオ」
「へ」
撮った写真を眺めている直の背中をバシッ、と叩くと、直が不思議そうに振り向いた。
雪は直の手からスマホを奪い、直のポケットに戻す。
「お前なぁ、俺とノリ合わせんでええねん。二人でも普通に楽しいやん」
「っ……」
「おもんなかったら帰るて。俺が嘘で連れと遊ばんの知っとるやろ? アホ」
呆れたため息を吐く。
ジロリと睨むと、直は驚き目を丸くしたまま黙り込む。
まったく、困った犬だ。
直は自分で初詣に連れてきておいて、雪が自分と二人じゃつまらないだろう、とトロトロしていた。
ドマイペースで、言葉足らずが不思議ちゃんの服を着て歩いている直。
おかげで雪の知る限り、長身で逞しい体の割に色素の薄い美形とモテ要素のある直は、これまで恋人どころかモテとは無縁に生きていたと思う。
けれど本当は優しく、割と気遣い屋だ。
不器用でスローなだけで。
仮恋人以前に幼馴染みだというのに今更気を使われて、雪はたいそう不服である。
「……でも一緒に騒ぐんがええんやろ? ユキの友達は、いつも一緒に」
「あ〜? アイツら好きで撮っとんねん。お前は写真興味あらへんし、そもニンスタしてへんやん? 俺のこれかて出かけた時の記念写真や。俺のニンスタはアルバムとか日記的なサムシーング」
「ようわからん……」
「まーかまへん。写真は俺の担当な。ナオは自分の行きたいとことかやりたいことに俺誘う担でええわ」
兎に角ノリを合わせる必要はない、と伝えると、直はコクリと頷き、マフラーに口元をうずめた。
直の頬が赤い。
やはり寒さには勝てないらしい。
「うし、屋台行くで〜。あったかいもん食ってあったまり」
「……暑い……」
「強がんなや」
耳まで赤い直にワハハと笑って、雪は屋台ゾーンへ足を進めた。
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