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第5話

 だがこの間会った李仁とは雰囲気も違い、店の照明も相まってか美しく感じた湊音。  前にあった時よりもピアスは少なめでバーテンダーの出で立ちが似合う男である。 「何にする? 1杯目は奢るわ」  喋り方は会った時と同じおねえ言葉。メニューを二人に見せる。 「じゃあ生」 『大島さん、ここはBARだっつーの』  雰囲気に合わない言い方はBARに慣れていないのであろうというのがバレバレであるが李仁は笑顔でおだやかに 「生、かしこまりました」  と返した。湊音もそれで、と続く。 「生、二つね。ジョッキじゃないけどいいかしら」 「は、はい……」  注がれたのはシャンパングラスのようなもの。大島は大酒飲みだから少しンっ?! という顔をする。  湊音も李仁からビールを渡される。その手がとても綺麗で見惚れる。ジョッキで飲むより上品で美味しそうに見える。 「今日はきてくれてありがとう」 「いただきます」  テーブルにはいろんな色のチーズが綺麗に切りそろえてあり、つまんで食べる。 「ねぇ、こないだの婚活はどうだった?」  李仁から話を切り出した。大島は待ってました! と言わんばかりに話し出す。 「おう、彼女できたぞ。李仁さんが上手くリードしてくれたおかげもあるかな」 「あら、あの女性と。お似合いねぇ。また今度うちの店にも来て」  大島は嬉しくてたまらなさそうである。しかし湊音は浮かない顔だ。 「あら、湊音さんはどうしたの? 帰りに小柄の女性と楽しそうに帰っていったようだけど」 『なにっ、みられてた?!』  それを聞かれると恥ずかしい湊音はビールを飲む。大島が湊音の方を叩く。 「そのあとラブホでやりまくったらしいぜ。若い子は違うねぇー。でもまだ付き合ってないらしくってさ。明後日、俺が渡した水族館のチケット渡したからそれで告白してこいよって、なぁ」 『大島さん、ベラベラ喋るなよ……李仁さんはニコニコ聞いてくれるからいいけどさ』  李仁はフフッと笑う。 「あらぁ、付き合ってもないのに深い関係に……そうやって始まるタイプ? 見た目からして意外」 『意外って言われてもさ……て、元妻の時もそんな感じか……』  湊音は元妻との恋愛はまず童貞喪失から始まった。そこから恋人になったのも相手からのアプローチで、年上だったからほとんどリードされっぱなしでずるずる行って結婚に至った。  そう思うと今もこのままで行けば明里と付き合い、結婚に至るのかと思うと湊音は頭が痛くなった。ビールのせいなのだろうか。 「奥手に見えるだろ、こいつ。たしかに奥手だし陰気臭いけどさ、勢いがすごいっつーか。だがこの見た目がなぁ」  湊音はお洒落に無頓着である。それに比べて大島自身は髪型をツーブロを軽くしたりスーツもそれなりにブランド物を着こなしている。 「ねぇ、李仁さん。こいつをカッコよくしてくれないか」 『えっ』  湊音はいきなりの大島の提案に動揺する。 「いいわねぇ。そうだっ、明日はどーう?」  李仁は首を傾げて湊音を見つめる。 『明日ぁー?』 「いいねぇ、明後日彼女のデートの前にいいじゃん」  と大島は大笑い。 『勝手に決めんなよ!』 「じゃあ、メアド交換ね」 「あ、はい……」  湊音は押しに弱い。目の前でニコッと微笑む李仁。俯いてビールを飲んだ。

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