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第6話

そして次の日の朝。シャワーに入り、体を拭いて鏡を見る。自分の体の締まりのなさ、猫背、洒落っ気もない髪の毛。  昨晩の李仁を思い出す。同じ歳なのにスタイルの良さ、顔立ち……。 『本当にあの人は僕と同じ歳なのか?』  と鏡の中の自分と睨めっこする。  集合場所は駅近にあるモールの本屋さん。お昼前に集合とのことだ。    ふと絵本コーナーに足を運ぶ。色んな絵本が置いてある。息子はどんな絵本がいいのだろうか。まだ文字は読めない、言葉も理解できないのだろうと湊音は立ち尽くしていた。 「いらっしゃいませ、絵本をお探しですか?」 「は、はい……」  振り返ると湊音は驚く。 「お子さんはおいくつですかぁ? ってチビちゃんじゃない」 「李仁さん!」 『またチビって。てかなんで李仁さんがこの本屋にいる? そしてエプロン……』  昨晩のバーテンダーをしていた李仁が本屋の店員として目の前にいたのであった。  それから昼。 「おまたせー」  湊音は本屋の横にあるカフェで待っていた。着替えた李仁の私服はおしゃれでピアスも前とあったときくらいの数がついていた。 『いい匂いするなぁ……てかバーテンダーだけじゃ食っていけないのか?』 「僕も早くきすぎちゃって……ごめん」 「いいよ、大丈夫。まずは下でご飯食べてー美容院行こうか。一時半に予約してあるの」  背も高く派手な格好をしている李仁。とても目が引く。  モールの地下にある喫茶店で昼ごはんを食べることになった。昔ながらの喫茶店で喫煙可ともあって男性の一人客が多い。  湊音はオムライススパ、李仁はカレーライス。注文し終えたあと、タバコを吸い始めたのは李仁だった。 「あ、吸ってもいい? てか湊音くん、吸ってるでしょ」 『なんでバレた? 匂いでバレたかな……』  湊音は服とか皮膚を少し嗅ぐ。李仁は細いタバコにおしゃれなジッポーで火をつける。吸い方もタバコの持ち方も美しく湊音は見惚れる。  湊音はカバンからタバコを取り出し、安物のライターで火をつけようとするがつかない。 「火、貸してあげる」  とおしゃれなジッポーで火を出してくれた李仁の仕草がカッコよくどきっとしてしまう湊音。 「可愛い顔してグレてる、なんてね」 「可愛くないです」  湊音は顔を赤らめて言い返す。 「補導されない? 外で吸ってると」 「うん、よくある。中学生に間違われてどこ中の何年だとか言われてさぁって……無いよ、そんなこと」 「上手い、ノリツッコミ」  湊音は李仁にからかわれて恥ずかしかった。でも確かに童顔で小柄な湊音は教師であるのにも関わらず生徒と勘違いされて厄介な目にあったことがある。 「今日は美容院にー、服屋さんにー、スーツ屋さん行くからね。明日のデートのためにもかっこよくなろうね」  何を話せばいいのかわからずタバコを吸い続ける湊音。李仁はスマホをいじっている。 「前の奥さんとの間には子供いたの?」  ブハッと湊音は飲んでいた水を吐き出した。李仁は慌てて横にきておしぼりで汚れた服を拭いてくれたのだ。また、むせたのもあって背中を李仁がさする。 「ごめん、変なこと聞いちゃった? ……このまま横に座っていい?」  さっきまで目の前にいたのに横に座る李仁。湊音は気が気でない。 「一応認知した子供がいる。離婚直前にわかって……」 「あらそうなの。まぁ色々あるわよね」  とニッコリ李仁は笑った。湊音はそこまで初対面に近い人には話すことがなかったがつい話してしまったと。でもとくに彼に話すことは別に悪くは無いかと不思議な感じがした。 「さっき絵本見てたけどさ、お誕生日に絵本を送るといいかもね。いいのを選んであげるわ」 「ありがとう」 「いいえ、どういたしまして」  二人は食後にコーヒーとタバコを嗜んだ。とくに対した話はしなかったが李仁が本屋の方が本業と聞いて驚く湊音であった。

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