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第10話

 次の日の昼、またまた喫煙室。湊音はタバコを吸いながら昨日の泣きはらしてた彼とは違い、ご機嫌な表情である。  昨晩のレストランが思いの外アットホームであり、オーナーも気前よく料理も最高であった。  そしてスマホで撮影オッケーともあり料理の写真を見返す。そして互いに撮った料理との写真。  照れながらもピースしてる自分、撮り慣れてるのかちゃんとポーズをして表情もきめている李仁。 『かっこいいなぁ……李仁さん』  口を抑えてもニヤニヤが溢れ出てしまう。行きも帰りも彼の外車に乗せてもらい、話も聞いてもらい、家に帰って数分後には今日は楽しかった、というメール。  そして昼にはもう一つメールが来てそこには李仁が撮った写真が添えられていた。 『こういうふうにデート後のフォローするからモテるんだろうなぁ、僕もこれくらいしないと』  と湊音は反省しつつ送られた写真を見る。レストラン内のふとした湊音の表情。すこし横向いている。  こんな表情をしていたのだろうか、覚えのない湊音。そしてそこに文が。 「この写真、お気に入り️」  その一文で湊音は足をバタバタさせて顔を抑える。 「なにやってる、湊音先生」 「ああああっ」  そこに大島がやってきたのだ。湊音はまた恥ずかしくなる。 「いや。その、なんでもないです」 「なわけないだろ、彼女……明里さんとデートしたんだろ、昨晩。それで昨日の夜ベッドでハッスルして楽しかったわ、うふふーなメール来たんだろ?」  大島は何も知らない。湊音は明里という名前が出ただけでも涙が出てしまう。 「ああああー、どうしたどうした」 「大島さん、もうその名前出さないでください……あばずれ女の名前をぉおおお」  事情を説明して大島は湊音を慰める。 「まー、しょうがないだろ。お前がちゃんと告白してればよかったんだよ。あんな痴女」 「……大島先生?」  大島をギロッと見る湊音。 「まさかですけど、大島さん」 「え、なんだ……」 「まさか明里さんと」 「!!!」  目を泳がせる大島。 「うん、一回やった」 「はぁあああああ?」 「ごめん、黙ってた……」  湊音はさらに落ち込む。大島に背中を叩かれる。 『明里さん……なんてことだっ! て、李仁さんはまさかやってないよね?』  昨晩、美味しいご飯も相まって色々と深い話もしたものである。湊音の元妻との出会いや馴れ初め、性癖。そして李仁の嗜好。  彼はこの時にバイセクシャルと告白したのだ。バイといえば男女両方とも、というものだが李仁はどちらかというと男性の方が好きと。  その時になかなか同性愛者を知らない湊音は根掘り葉掘り聞いたがその中で女性とのセックスはどのような感覚でするのかと聞いたら 「おしゃべりの延長のようなもの」  と李仁は答えていた。不安になるが聞くことはできない。 「すまんな、でもまぁ付き合う前にわかったからいいだろ。元気出せよ」 「李仁さんにもそう言われたので……」 「え、昨日李仁さんと一緒にいたのか?」  湊音は昨日の写真を大島に見せた。 「まじか。デートじゃん、お前のこの表情も嬉しそうだし」 「ち、ちがうよ。キャンセルできなかったから誘っただけで」 「俺を呼んでよ。そうか、俺よりかはイケメンのほうがいいよなぁーうむ」  湊音は顔を真っ赤にした。と同時に大島を誘ってもよかったのか、誘って欲しい人が自分にもいたのかというすこし謎な安堵感ができたのだった。

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