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第12話
案内された部屋に行く。普通のカラオケ店とは違うと湊音はすぐ分かった。内側から鍵を掛けられるものであり、李仁もさりげなく鍵を掛けていた。
部屋全体も薄暗く怪しい雰囲気満々である。
『大丈夫か、このカラオケ……確かに二人きりになれる場所だけど……』
早速ソファーに二人座った。システム的には一般的にカラオケと同じだが湊音は人前で歌を歌うことはなかなかない。
「あなたが歌わないならー」
と素早く曲を予約して歌い出す李仁。上手い方ではないが楽しそうに今時のポップスを歌う。
二曲目も歌いながら予約するという手慣れた作業をする李仁。
「はい、これなら一緒に歌えるでしょ?」
画面には人気アイドルの曲。李仁にマイクを渡された湊音は困惑する。
三十分後には湊音は李仁ともに歌った。クラブで叫んだのもあって喉も痛いようだが楽しい方が勝る。
「結構歌ったねー」
「うん……たまにはこれくらいはっちゃけないとダメかな」
マイクを机の上に置き李仁の方を見ると、李仁が艶かしく見てきたのだ。
「……李仁さん?」
「……」
「!!!」
李仁が湊音の太ももに手を置いた。
「二人きりね」
「そ、そうですね……」
その瞬間。李仁がキッと睨んだ。
「はっきりしなさいよ。もうバーでも本屋でもあなたのこと噂になっているわよ」
「えっ……」
「私のことを好きなおチビちゃんが付き纏ってるって」
湊音はオロオロする。普通に通っていただけなのに噂にまでなろうとは。
だが周りからすれば普通ではなかったのだ。明らかに好意を持って李仁に近づいていたのがバレていたのだ。
「私はこういうことされるのはよくあるし何かあっても警察の知り合いいるから悪質な場合はなんとかできるけど、もう周りからあなたが私のこと好きだってバレてる」
「そ、そんなっ。好き……だなんてっ」
「じゃあなんで毎日のように私に会いにきてるの。私のことを見てるの!」
『……僕のこの気持ちはやっぱり李仁さんが好き、だからってことなのか?』
湊音はようやく分かった。李仁が好き、ということを。
『でも彼は男……』
と思っている時にいきなり李仁が湊音にキスをしたのだ。何が起きたかわからない。固まる。
舌を入れられた時点で湊音は突き放した。あわわと声にならないものが口から出て財布からお金を出して机に置き
「ごめんなさいっ!」
と湊音は鍵を開けて部屋から出て行った。李仁は目を丸くして茫然とする。
「なによ、小心者……そんな気持ちで私に近づいて……馬鹿にしないでよ」
湊音は駅まで走った。息が切れるほど。なぜなら自分のアレが反応していたのだ。キスをされただけで。
『なんでっ、なんでだっ! なんで……相手は男、男になんで反応するんだっ』
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