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第15話
朝起きて湊音は李仁が用意してくれた朝ごはんを食べる。朝から手の込んだものを作るもんだと関心してしまう湊音。
「李仁は過去とか気にするほう?」
「んー、犯罪とかなければ……」
湊音はお茶を飲んで少し間を開けて言った。
「僕がバツイチでも?」
「別に」
「女性と結婚していたとしても?」
「ノンケとは何人かとしたことあるから大丈夫」
そして少し間を開けて
「元妻との間に……子供がいても」
「……別にそれはこないだ聞いたし、認知してるから大丈夫」
李仁は笑った。
「ごめん、朝からこんな話」
「大丈夫。少しほっとした」
『ほっとした?』
湊音はキョトンとした。李仁はごはんを食べ終わり食器を片付ける。
「ミナくんの遺伝子がこの世に残っていること」
「えっ」
「私たちこれからずっと一緒にいるとして……男と男同士では組み合わせできないから」
李仁は簡単にさらっと言ったが湊音は同性同士付き合うことの行く末は全く考えておらず、普通とは違うということを思い知ることになる。
だがまだ付き合ったのかというとまだ始まったばかりの二人であり、湊音にとっては早い話にしか思えなかった。
「なんてね、重い話返し」
と李仁が舌を出していつものように戯ける。
湊音もごはんをたべおわり、それを李仁が片付ける。
李仁は昼前の出勤とのことでまだルームウェア。そのまま玄関先まで送り届けてくれるらしい。駅までは歩いていくため少し早めにでることにした。
「今夜は本屋で終わりまで仕事だから来てね」
「うん……行けたら」
「合鍵渡しておくし、夜ご飯も作っておくから先食べていいよ」
湊音は今日1日のことを考えるとすごく気持ちが萎えてしまう。だが戻る場所はある。
「もぉ、少しはいい顔して。じゃあわたしがおまじないかけてあげる」
と言って湊音のおでこにキスをした。
『おまじないってこのこと?! 口じゃなくて……』
湊音は嬉しくて爪先立ちして李仁の唇に軽くキスをした。
「あらっ、キスをしたくなるおまじないだったかしらー。いってらっしゃい」
湊音は照れて顔を真っ赤にする。
「いってきます」
いつも通り仕事を終えて、クタクタ。気づけば李仁のマンションに着いていた。
『李仁はやたらとポジティブだからあのポジティブさを分けて欲しい。そういえば彼がかけてくれた魔法というのは効果あったのだろうか……』
とぼとぼと部屋まで行き、鍵を開ける。すると明かりがついていた。
『ん? 李仁帰ってきてるのか』
すると李仁が出てきた。湊音はびっくりする。そこにはニコニコと待っている彼がいた。
「おかえりなさい。今日は早く帰ってきちゃったー。早くご飯食べよっ」
美味しい匂いもする。湊音はカバンを置き、李仁に抱きついた。
「ちょっとぉ、ミナくんー」
「李仁ぉおおおお」
しばらく湊音は李仁に抱きつきながらたくさん泣いた。気が張っていたのが一気に弾けた。
李仁は頭を撫でて何も聞かず抱きしめた。
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