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嫌いじゃない

「この資料のコピー何部作成したんだ?長谷川(はせがわ)」 「えっと、20部です。」 「はあっ?俺は30部って言ったろうが早く用意しろよ。会議は後10分後だぞ!間に合わせろ。」 「すっ、すみません。」 あの夏祭りから10年が経っているが俺はこの時季が嫌いだ。 夏祭りが嫌いだ。 『俺も同じ気持ちだ。愛してる。愁哉が最後息をひきとる前に恭弥君に伝えて欲しいと言ったのよ。』 俺もお前を愛していた。 今もだ愁哉。 俺を1人にしてお前はあの日の夜空に咲いた花火の様に綺麗に輝いて俺の前から消えてしまった。 『夏祭りの帰りに交通事故で今朝方、亡くなったのよ。ごめんなさいね。愁哉と仲良くしてくれてありがとうね。』 愁哉の母親から聞かされた。 あの日の夏祭りに行かなければ愁哉は生きていたはずだ。 夏祭りなんかに行かなければよかったと何度も思って後悔しても愁哉が俺の目の前に現れるはずはない。 花火も嫌いだ。 この時季に俺がイライラしているのを周りの社員は知っているから八つ当たりされるのが嫌で近寄ってこないが長谷川だけは俺の仕事をいつもの様にサポートしている。 長谷川祥雅(よしまさ)は今年入った新入社員だ。 俺が教育係でそれからもずっと組んで仕事をしているが天然なのか小さなミスをよくしている。 今もコピーを頼んだのだが部数が言っただけ作成されておらずやり直しを言った。 「すみませんでした。」 「ギリだな長谷川。ありがとうご苦労様。」 小さなミスをするが一生懸命な長谷川は嫌いじゃない。 嫌いになれないのは・・・・・。

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