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後ろ姿
長谷川とは仕事の話以外はプライベートの話などなした覚えがない。
それなのに今日は何故か長谷川と少し話をしてみたくなり最寄駅まで長谷川と話して歩いた。
「長谷川は皆んなと花火を見に行かないのか?」
「聞かれてました。俺は人混みが苦手なんで小さい時は行ってましたけど高校生から行かなくなりました。藤澤先輩は?」
「俺も似たような感じだ。」
似たような感じだとか言っているが全く違う。
愁哉がいたら夏祭りも花火大会もそしてこの10年の俺の人生も幸せに過ごせていたのかもしれない。
愁哉を失った俺の人生は色を失くしてしまった。
「うわぁ〜。なんか列車運転見合わせとかになってますよ。」
長谷川の声に俺は我に返り電子掲示板を確認すると上りも下りも運転見合わせと表示されている。
そして駅員が列車運転見合わせの説明をしていた。
「どうしますか?線路脇の住宅火災とか何時間も待ちますよ。藤澤さんは他の路線とかで帰れるんですか?」
「この路線で帰宅するしかない。少し待ってみる。ダメならタクシーでも拾うからそれより長谷川は大丈夫なのか?」
「はい。俺は2駅なんで歩いて帰ります。」
「じゃあ、気をつけて帰れよ。」
「はい。お疲れ様でした。」
笑顔で帰って行く長谷川の後ろ姿を見ていると体型が愁哉に似ている。
俺は無意識に長谷川の後ろ姿に愁哉を重ねて長谷川の姿が見えなくなるまで見ていた。
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