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第3話 どうやら夢を見ているらしい

「うえっ、なにする――」 「お前には危機感ってものがないのか、こんなところで無防備にべろんべろんに酔っぱらって」  アレクに担がれたと思ったら、今度は雑に寝台の上に投げられた。その勢いで胃の中の酒が混ぜられて最悪ではあったが、着地先の寝台自体は柔らかな弾力で酔いの回った身体を受け止めてくれていた。 「日頃から面倒なのにあれだけ絡まれているのに、よくもまぁ」 「そーいうのは、ぜんぶ、返り討ちにしてやってる」  さっきから、本当に何がどうなっているのか分からない。  分からないけど、説教はまだ続いている。納得いかない。 「素面ならな、お前は大抵の奴には負けないよ。だが、この有様」 「ふあっ」  不意に手首を掴まれ、頭の上に縫い付けられる。 「簡単に押し倒されて、押さえつけられているが?」 「おま、にゃにを」  反対の手は自由だったので相手の肩を押し返そうとするが、屈強な身体は泥酔したオレの腕力ではビクリともしなかった。  すごい、このぱんぱんな三角筋。何たる魅惑の触り心地。 「ロクな抵抗ができないじゃないか。こんなことで襲われたらどうするんだ」 「よ、よけーなお世話だ、なんなんだ、オレの面倒は、オレがみるし、ヘマをしようが、それはオレのじこせきにん……」  押し返すフリをすることでその触り心地を堪能しつつ言い返していると、 「そう、自己責任だな」 「へっ!?」  不意に腹におかしな気配がした。 「な、なんでこんなこと」  アレクの筋張った手が、服の裾から侵入している気がする。オレの下腹を包み込んでしまえるような大きな手が、やわやわと肌を撫でまわす。 「好きに処分すればいいと言ったのはお前だ」 「は……?」 「危機感の非常に足りていないお前には、多少の痛い目が必要と見た」 「はぁあ?」  こちらを見下ろすアレクの表情は渋い。刻み込んだ眉間のシワは形状記憶されてもう一生元に戻らないのではと心配になるくらいで。  その非常にご機嫌宜しくない表情のまま、溜め息と共に言われた。 「解らせるには仕置きが必要だな」 ◆◆◆ 「どうした、そんな無抵抗で本当にいいのか」 「ぁ、は? ひぇっ」  気が付いたら何故だかズボンをずり下げられて、ナニを扱かれていた。  身体と言うのは実に素直で、酔いに酔っている割にはすぐに反応してどんどん硬度を増していた。  くちゅくちゅと音が鳴るのは、オレが先走りの汁を垂らしているからか。 「ん、やめ、こんなのおかし」 「おかしい? こんなにガチガチにしておいて?」  オレの反応はおかしくない。すこぶる正常だ。  好きなヤツに扱かれているのである。反応しない方が無理。  おかしいのは、お前の方だ、アレク。 「ひっ、まて、まって……!」  どうしてお前がオレのを扱いてみたりする。そっちの穴を指で解したり?  見合い相手はどうした、店の女の子でなくていいのか、相手を間違いすぎでは。  オレは不貞の相手に、泥棒猫になる気はないぞ。  言いたいことはいっぱいあるのに、その全部がろくに言葉にならない。だって与えられる刺激があまりに大きい。 「ひゃうっ!?」  が、先端にねろりと今までとは違う感覚を与えられて、オレは寝台の上で小さく撥ねた。驚いて僅かにシーツから背を浮かせると、とんでもない光景が飛び込んで来る。 「お、お前、オレのしゃぶれんの」  アレクが、オレのものを咥えている。とんでもないことが起きている。  それを見た瞬間、オレの頭の中に一つの答えが弾き出された。  あぁ、なるほど理解した。これは夢だ。  だって超都合のいい、ご褒美みたいな展開だ。何もかもがおかしい。  実際のアレクはオレに欲情とか絶対したりしないしな。  腹立つくらい爽やかで、オレに対して一度もよこしまな空気など出さず、つまりこの顔にもちっとも靡かず、ただただ友人として一番の信頼をオレに寄こして来る。それがアレクセイ。そういうとこが好きになった理由の一部なんだけど。  だから泥酔して、寝落ちして、それでこんな夢を見てるのだとしたなら、めちゃくちゃ納得できる。  こんだけ酒が入っててオレよく勃つなぁとも思っていたが、夢ならいくらでも自由が利くだろう。すごく納得。 「ん、んぁっ、ヤバイ、それ、あ」  それにしてもオレの願望丸出しでウケるなぁてっ言うか、オレ、こんなことまで望んでたのか。  深層心理ってやつ?  思ってたよりえろえろだなー、自分にびっくり、でもきもちーからもうそれでいいや、っていうかヤバい。これちょっと気持ちよすぎでは。オレの妄想力逞しすぎでは。 「アレク、アレク、あ、ホントダメ、出る、出ちゃうからっ」 「ん、飲んでやる」 「いらな、あぁっ!」  背筋に抑えがたい甘い痺れが走る。頭の中が真っ白になる。夢の中でオレはアレクの口淫を受けて、あっさりと頂点に達してしまっていた。

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