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第8話
小屋に連れて行き、服に手を掛けてもイブキは抵抗しなかった。
「嫌がらないのか」
「しても、お前は体を開くのを止めないだろう」
頷く。イブキは皮肉っぽく口の端を上げた。
「したいならすればいい。俺は操を立てる生娘じゃない」
投げやりな態度に気持ちが焦っていく。手に入れようとすればするほど、離れて行く気がする。
この男が欲しい。心の通わせなどわからない己は、こんな方法しか思いつかない。
イブキが布団の上に横たわる。諦めたように目を下に向ける男の表情はまた別の一面があり、ぞくりとするほど色気があった。
「お願いがある。終わったら……」
上に覆い被さると、か細い声でイブキが言った。
「終わったら、あの檻に戻してくれ……」
燃えるような支配欲が上り詰める。
イブキは酷い男だ。やすやすとこちらの柔らかい部分に入り込んでくるくせに、自分のほうへは踏み込ませてもくれない。
どうしようもなく、この男の泣いている姿が見たくなった。がぶりと首筋に歯を立てた。
「はぁ……」
細い首筋を舐め、舌を這わせていく。両肩から着物をずり下げて胸をあらわにした。寒さのせいか勃起している薄い突起に、シダは舌を絡ませる。
「シダ……おまえ、男に挿れたことはあるか」
ふ、と熱い吐息混じりに問われる。乳首を舐めていた舌を離し「ない」と言った。
「女のように濡れないから……ゆっくりしてくれ。痛いのは、嫌だ」
「わかった」
じゅっと乳輪ごと吸い上げると、イブキが丸めた拳をきつく握る。
「シダ、俺はお前が欲しがるほど……まともなやつじゃない。薄汚い人間なんだ、俺は……」
目を陰らせるイブキに構わず、体を前のめりにして、反応しないイブキの性器を握りこむ。こんなところまで美しい男の性器を、強弱をつけて扱き上げた。
「あ、あ……」
吐息と共に漏れる甘ったるい声にたまらなくなる。
「こわい、シダ、やさしく……」
「わかった」
怖がらせないように、壊れ物を扱う手つきで優しく触れる。先端の蜜が滴る部分を指で押し潰すと、ひくんとイブキの顎が反った。
「あ、ああ、くる……」
頭上の布団をぎゅっと握りしめ、イブキの体がさざなみのようにわなないた。どぷっと性器から白濁が漏れ、シダの手を汚す。
精液で濡れた手で後ろの窄まりに指を這わせる。つぷりと指を入れると、達したばかりで快感の抜けないイブキが喘ぐ。
「ああ、シダ……」
「ここがいいか?」
経験などなくても、本能が呼びかけている。手探りでイブキの体を、丁寧に暴いていく。
イブキを傷つけたいわけではなかった。この男が欲しいという、どうしようもない飢餓感に支配されておきながら、頭の片隅にある冷静さはイブキの体を追い詰めていく。
「はあ、ゆび、ゆび……っ」
二本の指をまとめて動かすと、イブキは布団をつかんでぶるぶると震えた。
「後ろの穴で感じるのか?」
悩ましげな眉間でこちらを見つめ、イブキは言う。
「そういう風に、なってしまったから……」
言葉の意味を深く考える前に、指を動かした。付け根まで指を入れ、熱い体内でぐるりと回し入れる。
「あッ、シダ、もう、指はッ……!」
指を抜くと、名残惜しそうに入っていた口が収縮する。卑猥な光景に唾を飲むと、イブキが股を大きく開き、誘ってきた。
「ここにお前のを、挿れて」
自ら開いた股の間にくちりと指を這わす。
「抱いてくれ。なにも考えられないぐらいに……」
自分のものをあてがうと、そこが吸い付いてくる。シダは興奮のままに、イブキの体を貫いた。
「はあ、ああ、ふと、い……っ!」
「ああ、狭いな……」
床に両手をつき、ゆっくり腰を進める。イブキの肉壺はこちらの性器に絡みついて、びくびくとうねる。まるで歓迎するかのように暖かい中が脈打って、シダの性器を締め付けた。
はふ、と手の中で息をしたイブキは、震える両手をシダの太い首に回し、引き寄せた。
「動いていいから、なあ、もっと……もっとうごいて」
「あまり煽るな……」
「めちゃくちゃにして、おねがい、シダ、……ああっ」
細腰をつかみ、体を前後させる動きを大きくする。がくがくと揺さぶられるイブキの、回された腕にぎゅうっと力がこもった。
「ああ、シダ、ああ、ああ……」
ぱん、ぱん、と肌を打つ音が小屋の中に響き渡る。
上り詰めていくにつれ、息が荒くなり、動きが速くなっていった。
「イブキ、イブキっ……!」
歯を食いしばり、名前を呼ぶ。呼びながら、叩きつけるように射精した。ぶるぶると体を震わせたイブキは、かくりと頭を落とした。イブキの腹には精液が飛び散っていて、腹に擦れて射精したようだった。
「イブキ」
名前を呼んで、くたりと力の抜けた男の体を抱きしめる。
長い睫が伏せられ、イブキは精も根も尽き果てていた。半開きの唇から、ぽそりと言葉が落ちる。
「……かえりたい……」
夢うつつのその言葉が、どこに帰りたいかを指しているのかはわからなかった。
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