8 / 12

第8話

 小屋に連れて行き、服に手を掛けてもイブキは抵抗しなかった。 「嫌がらないのか」 「しても、お前は体を開くのを止めないだろう」  頷く。イブキは皮肉っぽく口の端を上げた。 「したいならすればいい。俺は操を立てる生娘じゃない」  投げやりな態度に気持ちが焦っていく。手に入れようとすればするほど、離れて行く気がする。  この男が欲しい。心の通わせなどわからない己は、こんな方法しか思いつかない。  イブキが布団の上に横たわる。諦めたように目を下に向ける男の表情はまた別の一面があり、ぞくりとするほど色気があった。 「お願いがある。終わったら……」  上に覆い被さると、か細い声でイブキが言った。 「終わったら、あの檻に戻してくれ……」  燃えるような支配欲が上り詰める。  イブキは酷い男だ。やすやすとこちらの柔らかい部分に入り込んでくるくせに、自分のほうへは踏み込ませてもくれない。  どうしようもなく、この男の泣いている姿が見たくなった。がぶりと首筋に歯を立てた。 「はぁ……」  細い首筋を舐め、舌を這わせていく。両肩から着物をずり下げて胸をあらわにした。寒さのせいか勃起している薄い突起に、シダは舌を絡ませる。 「シダ……おまえ、男に挿れたことはあるか」  ふ、と熱い吐息混じりに問われる。乳首を舐めていた舌を離し「ない」と言った。 「女のように濡れないから……ゆっくりしてくれ。痛いのは、嫌だ」 「わかった」  じゅっと乳輪ごと吸い上げると、イブキが丸めた拳をきつく握る。 「シダ、俺はお前が欲しがるほど……まともなやつじゃない。薄汚い人間なんだ、俺は……」  目を陰らせるイブキに構わず、体を前のめりにして、反応しないイブキの性器を握りこむ。こんなところまで美しい男の性器を、強弱をつけて扱き上げた。 「あ、あ……」  吐息と共に漏れる甘ったるい声にたまらなくなる。 「こわい、シダ、やさしく……」 「わかった」  怖がらせないように、壊れ物を扱う手つきで優しく触れる。先端の蜜が滴る部分を指で押し潰すと、ひくんとイブキの顎が反った。 「あ、ああ、くる……」  頭上の布団をぎゅっと握りしめ、イブキの体がさざなみのようにわなないた。どぷっと性器から白濁が漏れ、シダの手を汚す。  精液で濡れた手で後ろの窄まりに指を這わせる。つぷりと指を入れると、達したばかりで快感の抜けないイブキが喘ぐ。 「ああ、シダ……」 「ここがいいか?」  経験などなくても、本能が呼びかけている。手探りでイブキの体を、丁寧に暴いていく。  イブキを傷つけたいわけではなかった。この男が欲しいという、どうしようもない飢餓感に支配されておきながら、頭の片隅にある冷静さはイブキの体を追い詰めていく。 「はあ、ゆび、ゆび……っ」  二本の指をまとめて動かすと、イブキは布団をつかんでぶるぶると震えた。 「後ろの穴で感じるのか?」  悩ましげな眉間でこちらを見つめ、イブキは言う。 「そういう風に、なってしまったから……」  言葉の意味を深く考える前に、指を動かした。付け根まで指を入れ、熱い体内でぐるりと回し入れる。 「あッ、シダ、もう、指はッ……!」  指を抜くと、名残惜しそうに入っていた口が収縮する。卑猥な光景に唾を飲むと、イブキが股を大きく開き、誘ってきた。 「ここにお前のを、挿れて」  自ら開いた股の間にくちりと指を這わす。 「抱いてくれ。なにも考えられないぐらいに……」  自分のものをあてがうと、そこが吸い付いてくる。シダは興奮のままに、イブキの体を貫いた。 「はあ、ああ、ふと、い……っ!」 「ああ、狭いな……」  床に両手をつき、ゆっくり腰を進める。イブキの肉壺はこちらの性器に絡みついて、びくびくとうねる。まるで歓迎するかのように暖かい中が脈打って、シダの性器を締め付けた。  はふ、と手の中で息をしたイブキは、震える両手をシダの太い首に回し、引き寄せた。 「動いていいから、なあ、もっと……もっとうごいて」 「あまり煽るな……」 「めちゃくちゃにして、おねがい、シダ、……ああっ」  細腰をつかみ、体を前後させる動きを大きくする。がくがくと揺さぶられるイブキの、回された腕にぎゅうっと力がこもった。 「ああ、シダ、ああ、ああ……」  ぱん、ぱん、と肌を打つ音が小屋の中に響き渡る。  上り詰めていくにつれ、息が荒くなり、動きが速くなっていった。 「イブキ、イブキっ……!」  歯を食いしばり、名前を呼ぶ。呼びながら、叩きつけるように射精した。ぶるぶると体を震わせたイブキは、かくりと頭を落とした。イブキの腹には精液が飛び散っていて、腹に擦れて射精したようだった。 「イブキ」  名前を呼んで、くたりと力の抜けた男の体を抱きしめる。  長い睫が伏せられ、イブキは精も根も尽き果てていた。半開きの唇から、ぽそりと言葉が落ちる。 「……かえりたい……」  夢うつつのその言葉が、どこに帰りたいかを指しているのかはわからなかった。

ともだちにシェアしよう!