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第8話 teardrop

 地元の駅に到着し、駅舎を出ると外は真っ暗だった。  それは日が落ちたからという単純な理由だけではなく、恐らく先ほどまで居た新宿と比べてしまっているせいだろう。  不夜城とはよく言ったもので、あちらは日没など微塵も感じさせず、むしろ眩しいくらいだったのに。  切れかけてチカチカ点滅する街灯が侘しさを助長させる。それを見上げながら、啓介は憂鬱そうに溜め息を吐いた。 「啓介」  名前を呼ばれ、暗闇に目を凝らす。あまりにも殺風景な駅前ロータリーに、自転車にまたがる直人の姿を見つけた。困ったことに、一目で不機嫌だと解るほどの仏頂面をしている。 「ただいまぁ」  機嫌を伺うようにヘラっと笑ってみせたが、直人の眉間の皺はますます深くなった。 「オマエさぁ、人に心配かけさせる天才だな。俺がどんな気持ちで待ってたかわかる?」 「電車の中から『大丈夫だよ』ってメール返したじゃん」 「それじゃ遅せぇよ。泣き声で電話に出られた身にもなれっつーの。ホントなんかヤバいことにでも巻き込まれたのかと思って、超焦った」  ぐったりと自転車のハンドルにもたれかかり、直人が顔を伏せる。流石に申し訳なくなって、啓介は神妙な面持ちで「ごめんね」と声を掛けた。 「ゴハン食べ行こ? 今日は僕が奢るから」  それでも直人が顔を上げないので、啓介は困りながらシャツを引っ張る。これで許して貰えないとなると、もうどうしていいのか解らない。 「ねぇねぇ、ごめんってば。だって僕疲れちゃって、説明する元気なかったんだもん。次から気を付けるからぁ」 「次なんて、あってたまるか。とにかく反省しろよ。もう心配かけるようなことすんな」  鋭く睨まれ、反射的に拗ねたように膨れっ面をしてしまう。それでも何とか「ごめんなさい」と謝罪の言葉を口にした。

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