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 トップモデル二人が散らす火花にあてられて、何だか早々に疲れてしまった。そんな気持ちが顔に出ていたのかもしれない。緑川は苦笑いして、労うように啓介の肩を叩いた。 「あの子たち、負けん気が強いでしょう。二人とも桜華大の卒業生でね、学生時代から良いライバルなの」 「え、じゃあデザイナー志望だったの?」 「いいえ、最初からモデル志望よ。彼女たちはファッションの知識を深めたいと言ってね、モデルの仕事をしながら服飾について学んでいたの。二人とも本当に勉強熱心で、お互いの存在をとても意識して切磋琢磨していたわ」 「なるほど。二人ともプロ意識のカタマリなんだ」  啓介が感心したようにうなずく。  服飾の専門知識がなくてもモデルの仕事は務まるだろうが、自分の着ている衣装がどんな素材でどんなふうに組み立てられたか、解かればもっと良い魅せ方が出来るかもしれない。 「でもさぁ、ランウェイモデルとスチールモデルで住み分けが出来てるんしょ。そんなに目の敵にしなくたっていいのに」 「そうね。でも、国内ならエレナさんもランウェイを歩くし、南野さんだって今日みたいに雑誌の撮影もある。境界線なんて曖昧よ。意識しない方が難しいわ」  そんなもんなのかと首を傾げていると、スタイリストらしき男性が衣装を抱えてやってきた。その男性は緑川と軽く挨拶を交わし、次に啓介へと体の向きを変える。 「初めまして、松永です。この衣装はブランドさんからの借り物なので、丁寧に扱わないといけなくて。なので、着替えを手伝わせて頂きますね」  よく見れば、松永は両手に白い手袋をはめていた。一体どこのブランドだろうと、タグを覗き見て目を見開く。南野が着ていた衣装に負けず劣らずのハイブランドだ。 「もし傷つけちゃったらどうなるの? 僕、買取なんて出来ないよ」  松永はその質問に答えるよりも先に、ホッとしたような表情を浮かべた。

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