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9-⑨

「こら。高校生コンビ、喧嘩しないの」  永遠のメイクを仕上げながら、ヘアメイクの女性が笑う。「高校生コンビ?」と、啓介が首を傾げた。 「そうだよ、あなたたち同い年。二人とも桜華大が志望校なんでしょ? 先は長いんだから、仲良くしときなよ」  快が「桜華大まで一緒かよ」と声を上げる。それはこっちのセリフだと思いながら、啓介も眉を寄せた。大人びた顔立ちのせいでもっと年上に見えたのだが、快が同い年だとは思わなかった。 「さて、永遠はでき上り。快くんも完成してるから、二人とも先にスタジオ行って良いよ」 「私、このお兄さんが変身するとこ見てたい。いいでしょ? 真由ちゃん」 「えー。じゃぁ俺も見てよっかな」  永遠と快が揃って言うので、真由は苦笑いした。 「いいけど大人しくしててね。それにしてもキミたち、松永くんの用意した衣装、ことごとくアレンジしちゃったね。まぁ、ブレイバーのコンセプト的にはそれが正しいんだろうけど。ちなみに私も松永くんもブレイバー担当だから、今後ともよろしくね」  話しながらも手際よく作業を進めていく。  真由が選んだのは真っ白いウルフカットのウィッグだった。トップは丸く短めで、襟足は肩に届くほどの長さだ。それでもレイヤーが入っているおかげで、重い印象は全く感じない。  前髪を横に流して馴染ませながら、真由が唸った。 「明るい髪色って日本人には難しいんだけど、キミは白い髪も似合うね。武器になるよ」  それは良い事を聞いたと思っていると、永遠も快も真剣な表情で真由の手元に見入っていた。真由がメイク道具を取り出すたびに、永遠は先ほどのノートにメモを取る。それは一つも残らず知識を取り込もうとしている、貪欲な姿だった。  ああそうか。と啓介は納得する。  撮影現場に来れば何かしら学べるとは思っていたが、そんな漠然とした考えでは甘かった。受け身でいたら、あっという間に時間だけが過ぎてしまう。何が必要で何が必要でないのか、今はまだそれを取捨するレベルにすらないのだ。永遠も快も、全て吸収するつもりで臨んでいる。  焦る気持ちが湧く一方で、何だか笑い出したい衝動に駆られた。 ――ここにいる人たちに服について一の質問をしたら、きっと十返って来るんだろうな。 「ねぇ。このコーデでネイルを黒にするの、どう思う?」  試しに啓介が問いかけると、永遠が「アリ」と即答し、快が「ナシ」と首を振る。 「黒? ありきたりじゃねぇか。俺は差し色で赤がいいと思う」 「赤じゃ浮いちゃって、最初に爪に目が行っちゃうよ。今日のコーデなら、私たち三人とも絶対に黒が良い」

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