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11-②

『まぁ、そうおっしゃらずに。前代未聞の待遇ですよ、新人が一ページ丸ごと独占だなんて。リューレントで他にあんな風に写真を使って貰えるの、南野さんかエレナさんくらいですからね。それに、何より本当に素晴らしい出来映えでした』  姿が見えていなくても、倉持が上機嫌だということがわかった。その倉持の背後で「凄い、凄い」とはしゃぐ永遠の声もする。 「永遠も一緒なんだ」 『ええ、これから永遠がイメージモデルを務めているブランドの広告撮りがありまして』 「広告撮り? 永遠ってブレイバーの専属じゃないの?」  啓介の問いに、倉持は「そうですよ」と朗らかに答える。 『雑誌のモデルとしてはブレイバー専属ですが、雑誌以外なら他にも仕事は色々出来ます。ブランドの広告塔や、コマーシャルとか。梅田くんが望むなら、ドラマ出演なんかも可能です。気合入れて仕事取ってきますよ』 「あー、うん。ありがと大丈夫。しばらくはブレイバーだけで充分かな」  話が膨らみ過ぎて、啓介は焦りながら早口でまくし立てた。倉持は「そうですか」と少し残念そうだったが、無理はさせないと約束した通り、すぐに引き下がってくれる。 『そうそう、これを伝えなきゃ。ブレイバーの撮影が来週の土曜に決まりました。集合時間が早いので、寝坊しないでくださいね。詳細はあとでメールで送ります』  啓介は「はぁい」と間延びした返事をしながら通話を終える。いよいよ動き出したなぁと、再びリューレントに手を伸ばした。  今、日本全国の書店にこの雑誌が並んでいるのかと思うと、身震いしてしまう。一体どれくらいの人がこのページを目にし、果たして何を想うのだろう。自分が読者だった時のように、胸躍るような期待感や高揚感を与える事は出来ただろうか。 「うわー。無理ぃ」  枕を手繰り寄せて顔を埋める。今更ながら、とんでもない世界に飛び込んでしまったものだ。枕を抱えて身を縮めていると、メールの着信音がして顔を上げた。倉持からの仕事のメールと予想したが、画面を見て「おや?」と思う。 「直人からだ。『今、外に出れるか』って? 何の用だろ」  啓介は髪をかき上げながら、のろのろと立ち上がった。

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