63 / 71

11-⑨

 寂しいと素直に吐露した直人に対し、啓介も今の気持ちを包み隠さず打ち明ける。 「あのね、さっき『解かる』って言ったのは本心だよ。僕も似たようなもんなの、直人に対する感情。側にいてくれたら心強いし、僕も直人の支えになりたい。でも別に、直人と恋愛したいわけじゃないんだよね。矛盾してて上手く言えないんだけど、それでも直人に恋人ができて楽しそうにしてたら、僕は物凄く嫉妬すると思う。僕は縛られたくないし自由でいたいのに、直人には僕を一番にしてて欲しいの。僕ってズルイでしょ」  今までもやもやしていたものを声に出してカタチにしたら、なんだか随分楽になった。聞いている方の直人もポカンとしていたが、啓介の言葉の意味を徐々に理解したのか、むず痒そうに首筋を掻く。 「あぁ、うん。まあ、だいたい同じか。俺もお前も」 「そ。大体おんなじ」  脱力するように、二人で同時に大きく息を吐いた。すっかり天気は雨模様に変わり、雷鳴はいつの間にか遠ざかっている。  しばらく互いに無言で空を眺めていたが、沈黙が続いても気まずさは皆無だった。むしろ流れる時間が心地良いくらいで、肩が触れるか触れないか程の距離にいる直人の気配と静かな雨音を、啓介はこっそり胸に刻む。  いつか進む道の先で途方に暮れた時、今日の出来事は灯りとなって自分を温めてくれるような気がした。 「雨にも雪にもなれなくて中途半端って言うけどさぁ」  唐突に直人が口を開く。どうやら先ほど啓介がこぼした言葉を、ずっと考え込んでいたらしい。照れ隠しなのか、直人はこちらを見ずに真っ直ぐ前を向いたままだった。 「雹ってレアで超良いじゃん。氷の塊のまんま地上に降りるぜ! って強い信念感じるし、何かカッコいいよ。あと、問答無用で攻撃的なところは確かにお前っぽい」  いつもより早口な上に独特な表現で、啓介は思わず吹き出してしまう。ケラケラ子どものように声を上げて笑いながら、啓介は首を傾げた。

ともだちにシェアしよう!