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12-②

「もうっ。お兄さんってば」  永遠のコーデに想いを巡らせていた啓介は、結果的に問いを無視した形になっていたらしい。気付けば永遠が、頬を大きく膨らませていた。 「え。永遠どうしたの?」 「どうしたのじゃないでしょ。私の話し聞いてた?」  そう言えば何か言われた気がする。啓介が首を傾げると、永遠の頬は益々膨らんだ。そんなやり取りを見かねた倉持が、二人の背中を叩きながら更衣室へと押し込める。 「ほらほら、話の続きは着替えながらね。松永さーん! 今日もよろしくお願いします」  言いながら倉持は、松永に向かって深々とお辞儀した。それに習い、啓介も永遠も「お願いします」と頭を下げる。 「こちらこそよろしくお願いします。二人とも今日は表紙の撮影もあるし、シーン別に何度か衣装を変えるけど頑張ってね。まずはこれを着てくれるかな」  それぞれに衣装を手渡され、早速着替え始める。用意された衣装はリューレントの時と違い、学生でも手が届く親しみやすいブランドだった。松永も今日は手袋は付けておらず、少しだけホッとする。 「さっきの話だけど。次の撮影の時は、前日からうちに泊まりなよ」  永遠がシャツのボタンをとめながら啓介を見る。うーんと唸りながら、啓介もトロンとした生地のシャツを羽織った。 「僕さぁ、プライベートの空間に誰かいるの苦手なんだよね、落ち着かなくて。だから永遠んちじゃなくて、どっかホテル取ってもらう」  にべもなく断る啓介に、永遠が挑むような笑みを浮かべる。 「お兄さん、そんなにあっさり断っちゃって良いの? 今まで私が溜め込んだ、選りすぐりのコーデの切り抜き見たくない? ノートでもう、ニ十冊以上あるんだ。あとね、廃盤になっちゃった雑誌もいっぱいあるよ。それからそれから、私の持ってる服も興味あるでしょ。女の子の服も男の子の服も、どっちもたくさんあるよ。二人でコーデして遊ぼうよ」 「なにそれ、すっごく楽しそう!」 「でしょでしょ?」  はしゃぐ永遠の背後から突然ぬッと手が伸びてきて、啓介は驚いて目を見開いた。そこにはニンマリと笑う快がいて、永遠の首に腕を回して肩を組む。 「いいな、それ。面白そう。んじゃ、その日は俺も永遠んち行くわ」 「えぇ。快くんも来るの?」 「当たり前だろ。俺は海外コレクションの動画持って行ってやるよ。ミラノにパリ、ニューヨークにロンドン。お袋が特等席で撮ったショーだぞ。興味あるだろ?」 「ある!」と、啓介と永遠の声が重なった。  

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