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第6話

「友達に迷惑がかかったら悪いから、この事は内緒にしておけよ!」 子供の時によくやったように、窓枠に足を掛けて体を思い切りぶら下げ、地面に着地する俺達に兄貴の声が頭上から飛んできた。 それに分かったと答えて、靴はどうしようと周囲を見回すが、ともかく今は逃げようと言う月の言葉に頷き、外に向かって靴下のままで駆け出す。 瞬間、ぬっと大きくて太い腕が俺の腹に伸び、そのままぐいんと体が宙に持ち上がる。 訳もわからず周囲を見回すと、いつもよりも地面が遠い。 「陽っ!陽を離せっ!」 月の声の聞こえる方に目をやると、月の頭が見えた。 「え?何で?」 横を見ると、いかつくて太い首。その上に乗っかる顔が俺の方に向いた。 「下ろせ!下ろせよ!」 その顔の恐ろしさに顔が青ざめていくのがわかる。足をバタつかせて、大声を上げる俺の耳に名前を呼ぶ声が聞こえた。 「陽っ!」 見上げると兄貴が俺を見て青ざめ、助けようと窓枠に足を掛けていた。 「はい、そこまでにして下さい!」 パン!と鳴り響く手を叩く音に、一瞬で皆の動きが止まる。 兄貴のいる窓から見知らぬ男の顔が出てきて俺達を見回すと、大きなため息をついてから口を開いた。 「空君……でしたよね?その窓枠にかけた足を部屋の中に戻して。そう、いい子ですね。それと、そこの双子はそのまま家の中に入りなさい。これ以上のご近所迷惑は感心しませんよ?」 言われて道路の方を見ると、近所の見知った顔が何人かこちらを見ている。 助けを求めるチャンスではと口を開こうとした瞬間、上から再び男の声が聞こえた。 「ヘタな事は言わない方がいいと思うよ?家の中で待っているご家族の事……考えようね。」 そう言って、兄貴の肩に手をかけて部屋の中に消えて行った。 「くそっ!」 「陽、どうする?」 月の言葉に、俺が何とかしなきゃと言う気持ちが湧いてくる。 「下ろせよ!」 怖さを見透かされないようにわざと強く声を張り上げる。 無理だよなと思ったが、俺の予想に反して男は何も言わずに俺を肩から下ろしてくれた。 「陽っ!」 月がすぐに俺に駆け寄り、大丈夫?と言いながら小声でどうする?と聞いてきた。 「家に戻るしかねぇよ。兄貴達が人質に取られているんだからさ……」 俺の言葉にそうだよねと言って俯く月の肩を抱いて支えながら、玄関の扉を開けようとした俺の手よりも先に、俺を抱き上げていた太い腕が扉を開けて俺達を中に押し込むように背中を押した。

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