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第7話
玄関で黒く汚れた靴下を脱ぎ、それを持ったまま月と二人でペタペタと廊下を裸足でリビングに向かう。
足裏に感じているはずの廊下特有のひやっという冷たさにも気が付かずに足を動かし続けた。
後ろからは俺達を逃さないようにと大きな男が廊下を通せんぼでもするように太い腕を広げてついて来る。
「どうする?」
月の震える声にわかんねぇよとヤケ気味に声を荒げた。
「黙って歩け!」
男の野太い声で牽制され、怖さで震えそうになる体を息を大きく吸ってぐっと我慢しながら、男に聞こえるようにチッと大きく舌打ちした。
国の機関というのだから暴力などはしないだろうと瞬時に考えての行動だったが、男のこちらをぎらっと睨む目を見て月がヤバいよと俺の腕を掴んだ。
「国とか言ってるけど、本当かどうか分からないよ?陽、あまり煽るような事しない方が良さそうだよ?」
コソコソと囁く月の言葉に無言で頷く。
俺達はただ兄貴から国の機関だと聞いただけで、確認はしていない。多分、兄貴達もこいつらの言っている事をそのまま俺達に伝えただけだろうし、兄貴達にだって確認する術はない。
それにもし、本当に国の機関だったとしても、俺達みたいな一般人が消えようが誰もすぐに気にしなくなるんだから、寧ろ何だってしようと思えばできるだろう。
それこそ警察だって何だって動かせるんだから。
チラッと後ろを振り返ると、男は先ほどよりは普通の目に戻っていたが、その奥にギラつく何かが光ったような気がして、少し体が硬くなった。それを感じ取ったのか俺に向かって男が片方の口端をほんの少し上げた。
逃げたら、分かっているよな?
口には出さなくてもそう言っている声が脳内に響く。
最悪だ……
前に向き直るとガクガクと震えそうになる足に力を入れて、月と共にリビングに向かった。
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