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第10話

「今夜はここで寝て下さい。あ、逃げようとしても無駄ですよ?エレベーターは終日この階には止まらないように設定してありますし、非常階段の類いには怖ーいお兄さん達が張り付いていますからね。大人しく美味しい夕飯を食べて、さっさと眠って下さい。」 俺達に廊下でそれだけ言うとJは自分の部屋にさっさと篭り、残された俺達は大男に押されるようにしてその隣の部屋に無理矢理押し入れられた。 制服の採寸と血液検査の為の採血をした後、俺達はかなり高級なホテルの一室に押し込められた。すでに温かく食欲のそそる食事とふかふかのどでかいベッドが用意されている。多分スイートとかいう高い部屋だと思うと兄貴が階下の豆粒みたいな人々を見ながら言った。 「なぁ、スマホは?」 ゲームやりたいんだよと口を尖らせて言うと、寮に用意してあるから今夜は我慢しろと言って大男はそのまま部屋から出て行き、バタンと扉が閉められた。 「はぁ、やっぱりダメか。」 俺の言葉に、兄貴が頷く。 「どうせ用意されたスマホを貰ったとしても、他にはかけられないように設定とかもされているんだろうしなぁ。やっぱり外部とは連絡無理か……」 「俺、先輩にさよなら言いたかった……」 月が嗚咽混じりで言いながら床にしゃがみ込む。 「大丈夫だって!Jも言っていたじゃないか?一年もすれば一時帰宅できるって。」 俺の言葉に月がキッと睨んで声を張り上げた。 「そんなの嘘だ!こんな事なら検査なんか受けなきゃ良かった……陽のせいだからね!陽が、面白半分に受けようなんて言うから……」 「んだよ、それ!月だって面白そう!って楽しんでいたじゃないか!?」 「ストーーーップ!」 兄貴が俺と月の間に入り両手を広げた。 「今更誰が悪いって言ったって仕方がないだろう?それより、まずは食べようぜ!今更イライラしたってもうなっちまった事は変わらない!だったら、今楽しめる事を全力で楽しもう!」 「兄貴……」 「月、お前の好きなオムライスに陽の好きなステーキ。ハンバーグにピザ!すげぇな、食べ放題じゃん!」 兄貴がテーブルの食べ物を引っ掴んで椅子に座るとパクッと一口食べる。 「うまっ!おい、これすごいうまいぞ!やっぱり、高級ホテルだけあるな。」 うまいうまいとどんどんテーブルの上の食べ物が兄貴の腹の中に入っていく。 「……食うか……?」 「……うん。」 月とテーブルの食べ物に手を伸ばして、椅子に座り口に運ぶ。 「え?うまっ!」 「すごい美味しいよ、これも!」 一口、口に入れた瞬間から、自分達の置かれた状況も忘れて無心で食べ物を口に運んでいく。 テーブルの上の食事があらかた俺達の腹の中に消えた頃には、今までの疲れが一気に噴き出して足はベッドに向かった。 男3人で寝ても大きすぎるベッドにゴロンと川の字で横になると、明日の事、これからの事も考える暇なく睡魔が脳を支配していく。 「俺達……どうなるん……だろうな……」 眠そうに呟く兄貴の言葉に答える間も無く二人の寝息が聞こえ、それに引っ張られるように俺も瞼を閉じた。

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