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第12話

「おい!陽、起きろ!」 兄貴の声に薄目を開けると明るい日差しに再び瞼がぎゅっと閉じる。 「着いたってさ。ほら、月はもう降りてるから、お前も早くしろって。」 兄貴に肩を揺さぶられて分かったよと明かりから逃げるように俯いて開かれた扉から外に出る。 「明るっ!」 「なんか結構な田舎?山の上だし。」 月が周囲を見渡して言うのに、ようやく明かりに慣れて来た目で周囲を見渡しながら俺も頷く。 「だな。逃げたくてもどんだけの山かもわかんねぇし、逃げるのは無理か……」 月も車から降りて来た兄貴も頷く。 「そういう事です。だから、こんな山の上にあるんですよ。さて、あちらが校舎、奥に見えるのが寮です。その隣が私が常駐している研究棟です。」 Jが建物を指でさして案内する。 「あのさ、他の兄弟じゃないΩとかもここに入れられているのか?」 ずっと疑問に思っていた事をJに尋ねると、Jは少し考えてから無言のままで歩き出した。 「おい!答えろよ!」 俺がJの肩に手をかけようとした途端、大男が俺とJの間に割って入り、おれの胸をどんと突いた。 「うわっ!」 「陽っ!」 バランスを崩して倒れそうになった俺を兄貴が支えてくれた。 「暴力に訴えるのは良くないですよ?その話は中に入ってからお答えしますから、今は大人しくついて来て下さい。」 分かったよとぶっきらぼうに言って、Jの後を歩く。大男は俺よりも少し後ろを俺の事を見張るようにして歩いてくる。 「陽、あまり無茶はするなって。力じゃ到底敵わないんだからさ。」 兄貴の言葉に、少しイラッとする。 月もそうだよと兄貴の言葉に同調するように頷くのを見て、心が一気に二人への不満でいっぱいになっていく。 なんだよ……もう、諦めているのかよ! 心の中で大きな舌打ちをするが、Jの言っていたαは抗いΩは従順と言う言葉を思い出し、こういうことかと妙に納得もしていた。 「はい、こちらからどうぞ。寮と学校、それと研究施設は全て繋がっていますので、外に出なくても行き来できます。」 「それって、外に出るなって言ってるのと一緒じゃねぇの?」 反抗するような言い方をする俺に、月がやめなよと服の裾を引っ張る。 「まぁ、そういうことです。でも、寒さや暑さに関係なく過ごせますし、私は寧ろ快適ですけどね。それにあなた方の逃亡防止もですが、外の方達から隠すという意味もあるのですよ。言わばあなた方は秘された存在。それも含めて中でお話ししましょう。」 にっこりと笑顔を見せるJの秘されたと言う言葉に引っ掛かり、眉間に皺を寄せたまま俺もJに続いて、まるで要塞のような施設に足を踏み入れた。

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