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第23話

むせかえるようだった匂いが甘くていい匂いに変わり、ハッと気がつくと俺の下で兄貴が荒い息をしながらうなじから血を流している。 「あっ!」 驚きと焦りで体を離そうと起き上がると、兄貴の体がビクンと跳ね上がり、甘い声が漏れた。 「あぁっ!」 「え?え?!」 きゅぅっと下半身が掴まれる感覚に下を見ると、俺の性器が兄貴の尻に入っているのが見えた。 「なっ!?ちょっ?!」 「動か……ないで……んんっ!」 そう言われてもこのままではダメだろうと思い、ともかく俺のを兄貴の中から引っ張り出そうと手を添えて力を入れると、兄貴の顔が苦痛に歪むのが見えて俺は動きを止めた。 「ごめん!!でも……これ……」 「陽、ゆっくり……ゆっくり……抜いて。」 「分かったよ。ゆっくりな?」 言われた通りに、静かにゆっくりと兄貴の中から俺のを引っ張り出そうとするが、兄貴の中が俺のを引っ張り込むように畝る。 「兄貴の方こそ……動かすなよ、中。」 「そんな事……あっ!」 刺激に我慢できず硬くなった俺のが兄貴の中をぐにっとなぞった。 「ダメっ!そこ、だめ!!」 言われても動かさなければ引っこ抜けないし、俺も中できゅぅっと絞られ、その刺激に腰が勝手に動き出す。 「やべぇ……腰、我慢できない。兄貴の中、きゅうって俺のこと絞ってくるの、ムリ。」 「ダメだってば!!陽、やめろって!!」 俺の体から離れようと四つん這いで逃げようとする兄貴の腰を両手がぐっと掴んで引き寄せた。 「陽!?」 無意識の行動に自分でも驚くが、先ほどまでの自分の行為を思い出し始めてもいた。 あぁ、俺逹……番になったんだっけ。 瞬間、αとしての自覚。覚醒。 まるで今までは寝惚けていたのではと思う位に頭の中がスッキリしている。 「……空……って、呼んでいいよな?」 俺の言葉に空の顔色が変わる。 「陽!しっかりして!!俺はお前の兄貴なんだ!!空じゃない!兄貴だろう!?」 叫ぶ空の腰を力いっぱい引き寄せると、一度抜けそうになっていた俺のちんこが空の中に再びずぶずぶと音を出して入っていく。 「空は兄貴じゃない!俺の番だ!!わからねぇなら、この体の奥深くまで俺のだって教え込んでやるよ!」 「やだぁ!!!」 空の顔が青ざめ涙を流し、手足をバタつかせて逃げようとする。 「空……もう、逃がさねぇ!!」 「やだぁあああああああっ!!!!!」 叫ぶ空を無視して腰を動かし、何度も歯を突き立てたうなじから流れた血が毛布にどす黒い染みを作っていく。 まるで俺の心の中に渦巻く空への欲望みたいだ。 それを見ながら空は俺のだと繰り返しながら腰を打ち付け、奥深くに射精する。 泣き喚いていた空の体が、動かなくなり、その意識がなくなっていることに気がついてようやく俺もその腰を止めた。 「おい!入って来いよ!!」 俺の呼びかけにJがおめでとうと拍手をしながら食堂に入って来る。 「俺は空と番になった。だが、俺を思い通りにするのはここまでだ!俺は絶対に月を番にはしない。いいか?!今日みたいな事をされても俺は月には手を出さない。だから、月だけは両親の所に帰してやって欲しい……」 俺の願いに拍手を止めてJが俺をじっと見つめる。 「αとしての覚醒をしたなら分かりますよねぇ?Ωが一般社会では生きづらいって事。それを帰せと言うのは寧ろ非道。」 「ちっ!分かれよ。」 クイっと顔を空に向ける。意識なく寝ている振りをしているが、その肩の動きがすでに不自然。 「あぁ……まぁ、そうですね。考えてはおきます。」 「食えない奴。」 ニヤッと笑った俺に、Jもくすっと笑うと、どうしますかと尋ねてきた。 「このまま部屋に戻ってシャワー浴びる。空のことは俺がやるから手を出すな!月にはどうせ黙っていても分かっちまうだろう?まぁ、うまくやるさ。」 そう言いながら、身支度を整えて空を毛布にくるみ抱き上げた。 「αって力も強くなるのか?」 「人それぞれです。あなたにどう言う能力があるのか、今度検査しますのでよろしく。」 「分かった。それと、妊娠検査もだろう?」 妊娠という言葉に寝たふりをしている空の体が反応する。 「そうですね。よろしく。ではどうぞお部屋に戻って下さい。」 「あぁ。」 食堂の扉を出ると大男が俺をじっと見つめていた。 「覚醒したのか?」 こくんと頷くとそうかとだけ言い、空の首筋から目を逸らして食堂の中に入って行った。 俺は部屋に向かって歩く間、ずっと震えが止まらなかった。

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