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第27話
そうやって何度も抱き合い、お互いの気持ちをぶつけてようやく俺と空は体を離した。それでも、しばらくするとすぐに空はヒートの衝動が襲って来て、その度に我慢できずに俺と抱き合い、気付いたら一晩中ベッドの中で過ごしていた。
「陽……起きてる?」
カタカタと揺れる仕切りの隙間から、月の声がして目が覚めた。
「あぁ、今何時?」
「朝の6時……兄貴は?」
言われて横を向くと、空はまだすやすやと寝息を立てていた。
「まだ寝てる。いつ戻って来たんだ?変な事とかされなかったか?」
尋ねながら、パンツだけ履いてベッドから抜け出すと仕切りの外にいる月に向かって歩いて行く。
「本当に学校でやるよりも少し大変程度の検査だった。それで、戻って来たのは……夜中。本当にこの仕切りって音が聞こえないんだね。俺、二人の声が聞こえなくているのか心配になって……ごめん。少し覗いちゃったんだ。」
「え?!」
夜中って言うと、まだ空を抱いていたよな?
月の顔が真っ赤なのを見て、自分の予想が当たっているのを確信して悪かったなと謝る。
「マズいもん見せちゃったみたいだな……でも、安心しろよ?俺は月を抱く気はないからさ!絶対に先輩の元に戻してやるからな。」
な?と言って月の顔を覗き込むと、月は少し困ったような顔を見せて首を振った。
「もう、いいよ。俺、検査されながら色々と聞いたんだ。それにあの男の人の話の事も考えてた。それに兄貴でさえああやって陽としちゃう位我慢できないって事だろ?兄弟っていう足枷も枷じゃなくなる程に強い衝動なんて、俺にも我慢できそうにない。」
「いや、ちょっと待てよ!そんな簡単に先輩の事、諦められるのかよ?!俺には嘘つけないって分かってるだろう?お前の気持ち、俺には丸わかりだっつーの!先輩と喋ってる時の月、マジで好き好きオーラ出しまくってたじゃん!それを諦めるなんて、無理だって月が一番分かってんだろ?」
俺の言葉に月が顔を上げて俺を睨んだ。
「分かってるよ!でもさ、聞けば聞くほど、無理だって事もわかるんだよ!先輩がαの可能性なんて万分の一じゃん!βの先輩と番になってもαとではないからヒート時の匂いは他のαにダダ漏れのままなんだって。だから、ヒート中にαに襲われて妊娠なんてことにもなりかねないって……そんなさ、知らない人との子供を先輩に育てて貰える?俺は無理だよ……そうやって色んな事を考えていたら……醒めちゃった。」
月が自分のベッドに寝転がって、俺とは反対の方を向いて横になった。
「もう、先輩のことは諦める。無理だもん……絶対に。」
月の言葉とは裏腹に月からは好きという気持ちが流れ込んでくる。
「嘘つきだな、月は。」
言いながら月のベッドに座る。
「俺にはビシビシ伝わってくるよ、月の好きっていう気持ち。なぁ、俺を少しは頼れよ?ダメだとしても俺は月の気持ちを大事にしたいんだ。だから、本当の本当に無理だってなるまでは、諦めるなよ!」
「どのみち、ダメだっていうならさっさと忘れたいんだ。諦めなきゃいけないって分かっているのに好きっていう気持ちを持ち続けるのは辛すぎるよ。だからって、俺も陽と番にはならない。これが俺のあいつらへのせめてもの抵抗だ。だから、陽も我慢してくれよ?」
「分かった……って言いたいんだけど、同じように言っていた空に対しても我慢できなかったんだよなぁ。絶対に空を抱くなんてことありはしないって思っていたのにさ。あぁ、くそっ!悪りぃ……仕切りん中に入るわ……空がまた衝動を強くし始めてる。ごめんな、月。この事はまた後で考えような?それと……嫌だったら他に行ってろよ?」
「大丈夫。本当に何も聞こえないから。俺もこのままもう少し寝るよ。おやすみ、陽。」
そう言って毛布を頭からすっぽり覆うと、もう月は口を開かなかった。
おやすみ
呟くように言って自分のベッドに戻って仕切りを閉じる。
昨夜の俺が今の俺を見たら、スッゲー顔をするんだろうな。
そんな事を思いながらベッドにぎしっと音を立てて上がると、すでにそこは甘い匂いで充満していた。
「陽……抱いて……俺、もう……熱くてたまらないんだ。」
伸びた手が俺の腰を掴んで引き寄せ、履いていたパンツの上から口で下半身を覆う。
「こへ、ひょーらい!l
「空、口に頬張りすぎてて何を言ってるのか分かんないよ。はぁ、我慢するなんて格好いいこと言ったけどさ……無理だよなぁ。空、俺のこれ、我慢できる?今回のヒートは仕方ないけど、次のヒートからは我慢、できる?」
「やだ!無理だよ!俺、今だっていっぱい我慢してる!もっともっといっぱい欲しいのに、陽のちんこ。」
「だよなぁ。俺もこの匂いを我慢できる自信ないんだよなぁ。だからさ、俺、しばらくは外で寝るって言っただろう?そうすればする気がないんだなってJ達に分からせられるし。これもどうせ聞いてるんだろうからさ、丁度いい。俺は月とは絶対にしないように談話室のソファで月が家に戻されるまで寝ることにする。な?」
空に向かって声をかけると、空はもう俺の言葉には全く興味はなく、俺の下着を脱がせようと手をかけていた。
「空、待てって!な?これじゃあ、全然説得力ないからさ!」
「今回は我慢しないって事だろ?だったら早くしよう?もう、俺……自分で弄りたい。」
空が自分の指を舐め始めるのを見て、俺は分かったよと言いながらその指の代わりに自分の指を空の口の中に突っ込んだ。
「ほら?俺のを舐めてよ!空って、口の中もエロいんだな。スッゲー熱くて気持ちいい!」
「ん!俺、もっと太いのが欲しい!なぁ、早くこの穴に陽の太いのちょうだい!」
ヒートだから仕方ないんだという言い訳ももう俺たちにはいらない。空と本当の番となってお互いの体を貪り合う快楽の深みに嵌まり込みながら、俺は頭の片隅で月を抱いていた。
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