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第28話

空のヒートの間に月は一足早く学校に行っていた。空はヒートでそれどころではないし、番である俺も空にずっと付き添っていたので、Jから俺も休んでいいと言われて、こういうところは一般社会とは違って良いところかもなと、少し思ったりした。 ここは男子のみが集められているので、いわば全寮制の男子校みたいなものだ。他に女子だけと男女、女男の施設があるらしい。 「女男?」 耳馴染みのない言葉に施設の話をしてくれていたJに聞き返す。空の衝動を治めた俺は、いつもよりは空の状態が落ち着いていたので、久し振りに食堂でご飯を食べようと来た。そこへちょうどJも食事をしに来て、俺を見つけると他に席があるのに、「一人のご飯は美味しくないから。」などと言って俺の前の椅子を引いた。まぁ、俺も一人飯よりは誰かと食べる方がいいので、そうだなと言ってもそもそと二人で食べ始めた。 「そう、女男。」 Jが箸を口に運びながら話す。 「女性がαの場合って事。まぁ異性は一緒にしてもと思うんですけど、わかりやすいって事で分けてるらしいんですよね。」 「ふうん。」 そんな話をしながら食べ終えた俺にJが椅子から立ち上がると、何かに気がついたように声をかけてきた。 「今日は何で食堂?」 「空がいつもよりは落ち着いてたから、少しくらいなら大丈夫かなって思って。空もいいって言ってくれたし。」 俺の言葉を聞いたJが黙ったままでいるのでどうしたんだよと俺も椅子から立ち上がって聞く。 「いや、そろそろヒートも終わりかなと思って。君達さ、特に陽君。君はαのΩへの欲望を本当に外で寝るだけで止められると思ってます?」 部屋でしていた会話が筒抜けだということは分かっているが、こうやって直接それを聞かれるのはあまり気持ちのいいものではないなと思いながら分かってるよと横を向いた。 「あぁ、時間稼ぎか……なら、口を挟むのはやめておきましょう。それにどの道、空君とももう一度きちんと番にならなきゃだしね。」 「は?!俺と空はちゃんと番になっただろうが!?だからこうやってヒートも治めてるんだし。」 最後の方はその行為を思い出して恥ずかしさに声が小さくなる。 「ふふ。まぁ、おいおい分かりますよ。それではそろそろ学校に行く準備もしておいて下さいね。」 そう言い残して、Jは振り向きもせずに食堂から出て行った。 「何だよ!ったく!」 俺もチッと舌打ちすると、部屋に向かった。 部屋はいつもなら入った瞬間にはゾワッとするほどの甘い匂いで充満していたが、今はもうそこまでではない。 「確かに、衝動の頻度も少なくなってきてるし、強さも前ほどではなくなったな……」 呟きながら仕切りを開けると、空が俺の脱ぎ捨てたシャツを抱いて寝ていた。 「空、帰ってきたよ。」 そう言って頭を撫でると空が眩しそうに目を開けた。 「陽……お帰り。あのさ……俺……」 もぞもぞと動かす腰に、また衝動が来てるなと思い、ベッドに上がって空に跨る。 「分かってるよ、空……すぐに治めてやるよ。」 「ちがっ……っ!」 空が一瞬、抵抗したような気がしたが、唇を合わせて舌を絡め合うと、とろんとした目で匂いを強くしながら俺に抱きついてきた。 「可愛いよ、俺の空。」 空の甘い匂いに負けないくらいの甘い言葉を吐きながら、俺達は欲望に身を任せて抱き合った。

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