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第31話
「な……に、いって……んだよ……」
空の声が震え、顔が青ざめている。
「俺だって、そんな……イヤだよ!」
月が仕切りの外へ出ようとするのを大声で止める。
「待てよ!別に嫌がらせとかそういうので言ってるわけじゃないんだ。空がヒートの時にきちんと俺は確認して番になったはずだった。でも、ヒートが終わってみたら、それは違うとかその時の自分の気持ちは本物じゃないとか、そう言って無かったことにしようとした。」
俺の話に空が何か言いたそうに口を開きかけたが、黙れと言うように手で塞いで話を続けた。
「月に見ていて欲しいって言ったのは、もしこの後も空が番になったのはその時の気分だったなんて事を言わない為に、月にきちんと証人として見ていて欲しいんだ。」
「空は本当に番になってもいいって言ったの?」
俺が喋ってもいいと頷いて手を外すと、空がモゴモゴと口を開いた。
「ヒートの時は……どうしても欲しくなる……んだ。それで、我慢できなくて……番になるって……言った。でも!俺たちは兄弟だろう?!こんな事、許されるわけがないんだ!母さんや父さんにだって……何て言ったら……いいのか。だから俺は、番にはならないって……やめっ!ぁあっ!んん……くぅっ!」
俺の指が中で擦ると、我慢できずに声を出してビクビクと腹を痙攣させる。
こんなにして、よく言うよ!
呆れたように月を見て分かるだろう?と頷くと、月は真っ赤になって俯いた。
「あのさ、もう自分が前には戻れない体になったって事、自覚しなよ!大体、ヒートの時にだけ精子を腹の中に入れるだけの関係なんて、俺はイヤだ!月だってそう思うだろう?」
「精子……?」
キョトンとした顔の月にヒートの時はαの精子だけがΩの熱を落ち着かせることができると言うと、再び真っ赤になった。
「分かるだろう?なんの感情も持たずに兄弟の腹の中に精子を入れるなんて、違うだろう?俺はさ、こういう事はきちんと愛し合ってしたいんだよ。番としてさ、俺が空を守り愛し慈しみたいんだ。月、月は俺と空のどっちが正論だと思う?」
「月……俺は、お前達の……兄貴……ぃあああああっ!」
「空は口を開けば兄貴兄貴ってそればかり。でもさ、結局ヒートになれば俺の精子を欲しがってまた嘘の番になって欲しいってせがむんだろう?俺は、嘘の番なんてイヤだ!ちゃんと空と愛し合いたい!」
「俺も……俺も、愛し合って番になるのがいいと思う。俺は先輩と体だけの関係なんてイヤだ!ちゃんと心も欲しい!…‥もう、無理だけどさ。だから、俺は陽の方が正論だと思う。」
「月、ありがとうな。俺さ、本当に空が愛しくて可愛くてさ、だからちゃんとした番になりたいんだ!月、証人になってくれるよな?」
月が小さくこくんと頷いた。
「月っ!?」
空の大声にも月はそちらを向く事なく、ここで見ていたらいいの?と俺に尋ねた。
「ああ。そこに椅子もあるし、なんならベッドに上がって来いよ。そっちの方が空の状況が分かりやすいだろう?」
一瞬のためらいの後、月がぎしっとベッドに足をかけた。
「来るな!来ないでくれ!イヤだ!見るな!見るなーーーーーっ!」
空の大声にも怯む事なくベッドに上がると、ベッドの上に俺と入れ替わるように座り、空を見下ろした。
「兄貴、ちゃんと番にならなきゃダメだよ。そんな体だけの関係なんて、おかしいよ。」
「兄弟でそういう事をする方がおかしいだろう?!何で、そこには何も言わないんだよ?」
「だって、もうしちゃったんだろう?俺も見たし。しちゃったら仕方ないし、それにもう番になってるんだから、この先もヒートの度にこうやって陽を欲しがるなら、ちゃんと愛し合ったうえでしなよ。そっちの方が、母さん達だって喜ぶと思う。嫌がる空を見たくはないと思うもん。」
「月、お前……何を言っているのか分かっているのか?なあ、兄弟でなんておかしいって言ったよな?こんな事もうやめた方がいいって、陽に言ってくれよ!」
「な?こうやっていつまで経っても同じことばっか!兄弟兄弟って言うけど、もうその一線は越えちゃったんだし、これからもヒートの度に越えるわけだろう?それなのにいつまでたってもそれを認めようとしない。これってさ、俺のことをただの都合のいい精子を腹に入れてくれて自分をヒートの熱から楽にさせてくれる奴って思ってるって事だろう?」
「そんなのダメだよ!おかしいよ!そう言う事は愛し合ってしなきゃ!そんなその時だけの関係なんて、それこそ母さん達が悲しむよ!」
月の言葉に笑いを我慢するのに必死で顔が赤くなる俺とは逆に、空は唖然として顔が青くなっていく。
「ほら、月もこうやって言ってるんだからさ……そろそろ諦めろよ、あ、に、き。」
「陽っ!ぅああああっ!」
囁いた俺に食ってかかろうとするがすぐに俺の指の刺激に声を出す。
「いっ……やだ……俺は……兄貴なん……だ。」
「はぁ、まったく頑固だよなぁ、空は。だったら、本当に泣いて喚いて平伏すまで、空が番にならせて欲しいって言うまで、このままでいようか?」
「やだ!イヤだ!俺は……俺は……」
「Ωだよ!兄貴はΩなんだ!もう、αにこうやって守られてしか生きていけないΩなんだよ!もう、諦めなよ!兄貴!俺に番もΩもいいもんだって教えてくれよ!じゃないと俺、辛すぎて生きているのがイヤになる!Ωの体に産んだ母さんと父さんを恨んじゃう!だから、頼むよ!俺をそう言う気持ちにさせないでくれよ!」
「月……お前……」
「兄貴、頼むよ……俺にはもう先輩と番になる未来はないんだ……だから……」
俺の心に俺と番にならなければいけないと言う気持ちが月から流れ込んできた。
「俺だって分かってる。でも、ここの奴らに少しは抵抗したいんだ。だけどきっと……でも、兄貴が幸せだって俺に教えてくれたら、俺も少しは自分の体のことが好きになれて生きようって思えるかもしれないだろう?Ωも悪くはないって……だから、頼むよ!」
今頃、この会話を聞いてるJがニヤニヤしているんだろうなと思いながら、俺も同じように心の中で笑っていた。
さて、そろそろ堕とすか……
「空、今ここで番になるって言えば……分かるだろう?もう、選択肢はないんだよ……だって、俺たちはすでに番なんだからさ。今更、空が番じゃないって騒いでも、次のヒートでは俺を欲しがって何度もその腹の中に俺の精子をぶちまけられるんだ。それを嬉しい、嬉しいって俺に抱きついてもっともっとってねだって。覚えてるだろう?昨日までの自分を。俺に抱きついてちんこ欲しいってずっと言ってたの。」
「やめてくれ!もう……やめてくれ。」
「そうだ!今度は動画に録っておこうか?それを月に見せてやるよ!」
「分かったから!もう……分かった、から。言えば、月には……」
「……」
空の言葉に無言でじっと見つめる。
「番に……俺を陽の番にして下……さい……」
「それで?」
「陽っ!」
「番にするだけでいいのか?違うだろう?ここにさ……言えよ!」
グチュっと音を立てて中の指を動かすと、あぁっ!と声を上げてのけぞった。
「動かさない……で。言うから……俺に……俺に陽のちんこ、入れて下さい……お願いします。」
「聞いたか?月。いいな、言ったよな?」
「うん。俺が証人になる。兄貴と陽が番になった証人になる。」
「もういいだろう?月を出してくれよ……」
空の言葉を聞いて月に向く。
「月はどうしたい?見ていきたくはないか?俺と空が番になるところ。お前ももしなるって時に、見ておいた方が気持ちが楽だろう?」
「陽っ?!そんなの、イヤだ!月、頼むから出て行ってくれ!」
「分かってる。」
そう言って月が空の顔をそっと撫でた。その言葉に空がホッとしたのも束の間、月は空の頭を自分の膝に乗せると言った。
「何……してる……?」
「俺もさ、陽の言葉に賛成なんだ。見ておいた方がいいと思う。それに、二人のはもう何回も見ちゃったんだ。だから、今更だよ。それに兄貴が本当に陽と番になるのか証人として見届けないと。」
「だってさ!俺は出て行ってもいいって言ったけど、残るって決めたのは月だし。証人として見届けるって言う月の言い分も、そりゃあ、そうだよな。じゃあ、そう言うことで……空が欲しがった俺のちんこ、入れてやるよ……っ!」
「月、見ないで!見るなーーーーーっ!!」
俺の腰がググッと空にくっついていく。
「ぁあああああっ!」
ずっと我慢し続けていた空の腹に白い体液が飛び散った。
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