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第32話
「す……ごい……」
ぼそっと月が呟いた。
お前もその内……
くくっと心の中で笑う。それでも今は、空に集中して腰を動かす。
「ここをさっきから擦って欲しかったんだろ?指じゃ届かない、この奥のここをさ。」
「ぁあっ!ダメ!そこぉ!また……イ……っちゃ……ぃああああああっ!」
言ってる側から、また腹が白く汚れていく。
「ずっと我慢してたもんな。ほら、月もびっくりしてるぞ。」
「やだぁ!見ないで!見ない……ぁあああっ!」
「見ないでって言いながら、無茶苦茶キュンキュンしてるじゃん。見られて感じちゃってるんだ?これからも月に見ていてもらおうか?それとも、食堂の双子達みたいに皆の前でヤる?」
「……じわる、言うな……んっ!」
「嘘だよ。こんな可愛い空を誰が他の奴らなんかに見せるもんか。ほら、そんな睨むなって。悪かったからさ。な?」
唇を合わせ、月の目の前で二人の舌が絡み合う。ゴクリと鳴る月の喉。突如、空の頭を膝から下ろすと、立ち上がった。
「どうした?」
分かっているだろうと言う目で睨んで、ベッドから降りようとするのを腕を引っ張って止める。
「何?」
「待てよ!これから俺たちが番になるのに、証人のお前がいなくなったらダメだろう?」
腰を捩って俺を睨む月に無視を決め込んで、なぁ?と空を見る。
しかしこちらはもう俺の腰に翻弄され、俺の声も聞こえずにただ喘ぎ声をあげているだけ。
「こうなっちゃったらさ、また空が俺は言ってないだの許してないだの言い出しそうだろう?なぁ、ちゃんと証人として見ていてくれよ。」
腕をぐいっと引っ張ると、月の体がベッドに横たわりそのまま顔を上げると、俺と空がつながっている部分が見えたらしく、くぅっ!と呻き声を上げて下半身をぎゅっと握った。
それでも目は同じところをずっと見続け、息を荒くしていく。
「なぁ、月も欲しくなっちゃった?」
俺の言葉にハッと気がつくと、違うと大声を出して横を向くが、それでも意識は俺達に固定されたまま、どんどんと背中が丸くなっていく。
「もう!早く番になれよ!」
大声を出して、なんとか俺の意識を自分から離れさせようとしているのが見え見えだが、俺もそろそろイきそうだしと月に頷いた。
「分かったって。空、俺の番になるか?ん?空、聞こえてる?」
「なる!なるから、噛んで!うなじ、噛んでぇ!」
「分かったよ。でもさ、もう番じゃないとか、俺のことがイヤだとか、兄貴なのにとか兄弟なのにとか言うなよ?そしたら、今度はJに言って本当に食堂で番にするからな!分かった?」
「分かったから……お願い……噛んでぇ!」
「聞いたよな、月?空の言葉、ちゃんと聞いたよな?空が違うって言ったら、ちゃんと証人として空に言ってくれよ?」
「うん。」
月の言葉に満足して頷くと、それじゃあと言って口を開けた。すると月が目を見開いて声を上げた。
「牙?」
「あぁ?あ、これか……なんか噛むのに必要なのかαに覚醒したらこうなってた。じゃあ、空のうなじに噛み付くから…‥見とけよ?」
俺が言うと、寝ていた体を少し起こして空の首が見えるように動いてからいいよと頷いた。
「空、俺の番。俺のだ!」
ガリっという音とブチっという音と共に空が悲鳴を上げる。
「あぁあああああああっ!」
瞬間、空の体が跳ねて再び体液が飛び散る。そのままガクンと意識を失い、しばらくすると寝息を立て始めた。俺も空の中を熱くしてから抜くと、バタンと横になった。
「はぁ、ようやく空を俺のモノにできた。ありがとうな、月。」
月の伸びた足を掴んで引っ張ると、ビクッと体を揺らした月が動揺して体を固くした。
「ちょっとだけ膝を貸してよ。おれ、疲れちゃってさ……いいだろう?」
ぐいっと引っ張られた月が横倒しになったところに体を寝たままで擦り寄り、月の膝に頭を乗せる。
「気持ちいいなぁ。月の膝、丁度いいわ。」
「陽、触らないでよ。足……寝るのはいいけど、そんな風に撫でないで。」
いい枕だくらいに撫でた俺の手に反応して可愛いこと言うじゃん!さて、本音はどっちなんだろうな?
「悪りぃ。ついいい枕だなって思ってさ。イヤならやめるよ?」
そう言いながら、撫でていた手を膝から上に向かって伸ばす。
「んっ!ダメ……ってばぁ……んんっ!」
腰を捩るが俺の手をどかそうとはしない。頭に当たる下半身も先ほどよりも反応しているのが分かる。
いけそう……だよな?
片方の腕を月の頭に回す。ビクッと体が跳ねるが、すぐにぎゅっと目を瞑ってじっと動かないまま。
いける!
確信を得た俺が頭に回した腕に力を入れた瞬間、空の体が俺にぶつかってきた。
「い……ってぇ!何すんだよ?!」
「何するってそれは俺のセリフだ!お前、月には手を出さないって言っただろう?俺だけでって言ったじゃないか?しかも、番になった瞬間にそんな……もう、陽なんか嫌いだ!」
「え?ちょっと待てよ!空、泣いてるのか?なぁ、空ってば!」
きっと睨んだ空の目に涙が浮かんでいた。ちくっと胸が痛み、さすがに悪かったなという思いが心を占める。
「俺!ごめん、兄貴。なんか二人のこと見てたらヘンな気分になっちゃって……もう、出ていくから!陽もごめんな。それじゃ!」
「あ、月!」
伸ばした手をすり抜けるように月が仕切りの外に出て行った。
「陽!俺との約束破る気か?だったら、俺だって……」
「俺だって、どうするんだ?」
月のことは一旦諦めて、空の横に座る。
「俺だって……陽のこと嫌いになってやる!」
「あれ?さっき俺の事嫌いだって言ってたような気がするんだけど……空、どういう事?俺さバカだから、ちゃんと説明してもらわないとわからないんだけど。」
俺の言葉に空の顔が真っ赤になってプイッと横を向いた。
「嫌いだ……そうやって俺のこといじめて……もう、兄貴じゃなくていいなら、俺のこと甘えさせてくれたっていいのにさ……月に手を出そうとして……嫌いだ!!陽なんか大嫌いだ!」
ボソボソと呟くように言った後で大声で騒ぐと、空の肩が震えた。
「悪かったよ、空。俺が悪かった。あまり騒ぐと傷口に良くないからさ。な?」
そっと背中を抱き締めると空がもそもそとこちらを向いたが、顔は俺の胸に埋めたまま。
「俺の事、好き?」
小さい声が俺に尋ねる。
「あぁ、好きだよ。愛してる。これが運命の番だからでもなんでもいい。俺は空を愛してるんだ。」
俺の言葉に嬉しいと呟くと、俯いていた空の顔が俺を見上げた。
「どうした?」
「……」
黙ったままでずり上がると俺の首にチュッという音と軽い痛み。
「ってぇ!何?」
「痕、付けた。俺のだっていう証。俺にはここにあるから。」
空の手がそっと首筋に触れる。
「嬉しいよ、空。」
そう言って、目の前にある突起をぺろっと舐める。
「ひぁあっ!何する……んぁあっ!」
「だって、目の前にこんな可愛い乳首があるんだから舐めるだろ?あぁ、もうこんなにしちゃって…‥エロいな、空は。」
背中に回した手がさっきまで俺を受け入れていたひだをなぞると、すでにトロッとした体液で指が濡れた。
「エロい俺、嫌い?」
「嫌いって言ったのは空だろう?俺はどんな空だって好きだし愛してる。特にエロい空は大好物だよ!」
「嫌いじゃない!俺も……俺も陽が好き!愛してるから……なぁ、陽のさぁ、またちょうだい……」
「いいよ、空がいらないって言ってもやるから!覚悟しろよ?」
うんと大きく頷く空を抱きしめながら、薄く開いた仕切りの間からこちらを見る視線にほくそ笑んでいた。
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