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第44話

「さて……と。月は少しだけ我慢な?俺をあんな風にした罰と、空の噛み跡を見ればわかるよな?」 仕方ないなと言うようにこくんと頷く月に、ありがとうと言って空が俺の側におずおずとにじり寄って来るのを、ふふんと鼻を鳴らしてベッドの端に寄りかかった。 「陽?」 腰を揺らしながら、四つん這いで近寄ってくる空に命じる。 「跨がれ。」 「え?!跨がれって……?」 空が本当にわからないと言う顔で、俺をみてから後ろを振り向く。 こちらは意味が分かって、顔を赤くしている月にどう言うこと?と尋ねた。 「自分で……兄貴が自分で、陽のを挿れるって事……だろう?」 最後は俺に確認するようにこちらに視線を移した。 「え?自分で……やだよ!そんな恥ずかしい事!!やだ!!」 「俺は別に空じゃなくても、月でもいいんだ。月なら今すぐにでも出来んだろ?」 俺の尋ねるのに月が口を尖らせた。 「出来る……とは思うけど、俺だって恥ずかしいよ?」 「月は出来るってさ?空、順番代わるか?」 俺の上から目線に意地悪と頬を膨らませながらも、分かったよと言って一応はこちらに向かって来る。だが、時間をかければ俺が我慢できずに挿れてくれるかもと期待しているのか、さっきよりももっとゆっくりと時間をかけている。 あわよくばはねぇんだよ! 空のガキ臭い計画に乗ってやるフリをして、この先どちらが上かをきっちり教え込んでやる! 「待てねぇよ!」 片腕を引っ張ると、つまづくように俺の膝の上に乗っかったのを、くるっと向こう向きにしてほら!と腰を突き出した。一瞬は挿れてもらえるとホッとした空の体が再び硬くなる。 「……うーーーーーー。」 「唸ってても、どうにもならないんだから、さっさと腰を下ろせよ?」 「分かったから、待ってよ。」 顔を赤くして何度も深呼吸すると、ようやく観念したのか自分の穴を指で拡げて俺のを咥えようとする。しかし、入り口から垂れた体液がぬるぬるとして俺のがつるんと滑ってしまう。 しかし、本人はその刺激だけでも気持ちいいのか、くねくねと腰を動かして、見なくても分かるほどに目を蕩けさせているんだろう。 俺はそれじゃあ、満足できねぇっての!! 我慢の限界と吹っ飛んだ理性が空の立てている膝裏に腕を回してぐいっと抱き上げ、欲望のままに一気に俺を突き刺した。 「いっ!?ぃああああああっ!!!」 ばたつかせる足を力で拘束し、根元まで入るように今度は空の体を寝転がせて俺が空の足を片方持って立ち上がる。 ズン!と空の体がひしゃげるくらいに上から圧迫して何度も奥に突き刺していく。 「ひぁあああっ!!やめっ……やらぁああああ!!!」 回らない口で嫌がる空を月が青ざめた顔で見守る。 「月、お前も俺の言うことを聞かないと、こう言う目に遭うんだぞ?分かってるな?」 支配と征服 Ωへの愛と呼べるのか? 番へのこれが愛なのか? 頭ではもっと優しくしたい、もっと甘い時間を与えたいと思うのに、いざこんな風に番をこの手に抱くと、その感情は支配と征服欲に占領され、こうやって辛い思いをさせてしまう。 ……それでも、止められない。止まれない。支配と征服でしか得られない、俺への愛。 Ωだから、運命だから、αの俺を愛していると勘違いしているだけなんだ……。 どんな辛い事をされてもただひたすらに手を伸ばして、俺を、俺だけを求める。 そんな涙と涎でぐちゃぐちゃになった空の顔をもっともっと歪ませて、泣かせて、絶望の沼底に追いやらせたい。 それでも尚、俺の名前を呼んでくれるか?俺に手を伸ばし、求めてくれるか? 絶望に追いやっている俺自身の名を…… 違うっ!!αだから、運命だから……だから、俺を求めているだけだ!! 身体が激しく番を求める。 もっと深く、もっと強く。 その声に俺自身が支配され、強欲に空を求める。苛立ちも不安も全て空にぶつけて……これが愛なのか? それでも俺にはこうする事しかできないんだ。番への独占欲に支配された俺には…… 「うぅあっ!ぁあああっ!!陽、噛んでぇ!!イっちゃうから、イくぅ!!早く、かんでぇええええ!!!」 空の哀願にその体を四つん這いにして腰を打ち付けながらうなじにかかる髪をよける。 「いいか?」 うんと頷いた空に激しく腰を打ち付けてぐぅっと奥に届くように身体を密着させる。俺の体温で空の中を満たしながら、俺は跡の消えかかった綺麗なうなじに再び俺の番だという証を、白い雪を汚すように刻み付けた。

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