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第46話

ついに!! あの告白の日から数日後、先輩が車から降り、周囲を見回す。 「先輩!!」 「陽!!」 駆け寄りそうになった体を理性が止めた。 「どうした?」 すぐにでも駆け寄って来ると思っていた先輩が、心配顔で俺に早足で近付きながら尋ねる。 「俺、先輩にすごく会いたかったし、来てくれてすごい嬉しい……でも、本当にいいの?もう、今までの場所には戻れないし、家族とも……」 「今更何を言っているんですか?ここまで来て、この場所を見た時点で、帰れるなんて思わない事ですよ。」 ピシャッと先輩の後ろから降りてきたJに言われて、だってと先輩が笑って両腕を広げた。 「ようやくお前に触れられるって楽しみにしていたんだけど……なぁ?俺はいつまで我慢すればいい?」 「先輩っ!!」 言われた瞬間、その腕の中に飛び込んでいた。頬に当たる先輩の胸。閉じた瞼。じわーっと広がっていく感情に無意識に涙が流れた。 「陽っ!!ずっとずっとこうしたかった。本当に諦めなくて良かった。」 先輩の体も震えている。俺も口を開いたらまるで子供のように泣き出してしまいそうで、必死に頷くのが精一杯だった。 Ω特有のαを翻弄する甘い匂いではない先輩の体臭に包まれ、ただ好きと言う感情のみが溢れ出すこの気持ちをずっと味わっていたくて、腕を先輩の背中に回した。 「感動のラストシーンは後にして下さい。大体、あなた方はここからがスタート。大盛り上がりの後は落ちるだけですよ。」 冷めたJの言葉に苦笑しながらも分かったよと言って体を離す。 俺達と同じように、身一つで来た先輩も手ぶらで俺の隣を歩いて施設に向かう。トンと触れた手。先輩が俺の手をそのまま握り、何事もないように前を見て歩くが、チラッと盗み見た先輩の耳が赤くて、俺も俯いたまま顔が熱くなっていくのを感じていた。

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