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第47話
「先輩!!」
今までの部屋では狭いだろうと言う事で、使っていない棟をこの数日で工事した俺達の新しい部屋に入ると、片付けをしていた月が振り向いて駆け寄って来た。
「月っ!!……お前なぁ。」
俺との手を離して月の頭をこづく。
「人の恋路を邪魔する奴はって、知ってるか?」
「それを言うなら、俺の方が先に陽を好きだったんだから、先輩の方が馬に蹴られるんじゃないの?」
「それは……」
先輩がぐっと言葉を飲み込むのを見て、空がふふっと笑って手を差し出した。
「どちらも恋が叶ったんだから、いいでしょ?リアルでは初めまして。陽と月の兄で、陽の番の空です。」
先輩も手を差し出し、空の手を握りながら自己紹介をするかに見えた瞬間、先輩の手が空の手を引っ張った。
よろけた空が先輩に抱きつくのを握ったままの手を離す事なく、反対側の腕で受け止める。
「何……っ?!」
「先輩っ?!」
空と俺達双子の声が部屋に同時に響いた。
「え?!……あ、ぁあっ!!すいません!!なんか急に意識がぼわーっとして……すいませんでした!!」
慌てて空を離した先輩に、ふふっと微笑みを返した空が俺をチラッと見た。
「何だよ?」
「もしかして、昨夜の陽の匂いがまだついてるのかな?って思ってさ。」
一瞬の間の後で、ボワっと体が熱くなる。
確かに昨夜は、今まで過ごしてきた部屋での最後の夜だった上に、3人だけで過ごす最後の夜という事で、大盛り上がりに盛り上がり、明け方まで……
そこまで考えて、ハッと先輩を見ると、先輩も顔を真っ赤にしている。
「空っ!!匂いなんてついてるわけないだろ!?シャワーだって浴びたんだし。」
「そうだったね。陽が念入りにあちこち洗ってくれたもんね?」
「空っ!!」
絶叫のような俺の声に吹き出した空と月が大笑いする。
「ごめん、先輩。」
謝る俺に、あぁと気のない返事をする先輩の視線の先で空が笑っていた。
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