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第5話
ギルは、聖地カラドの隣の異世界より現れた敵たちと一戦交えた報告を、法皇の間で述べていた。
「女神ファタルのご降臨が近いと知り、奴らも興奮してきたと見える」
報告を受け、苦笑交じりに法皇はそう話した。
声色は穏やかだが、どこか楽しそうなその姿に、ギルは黙って頭を垂れていた。
「今回の働き、真に大儀であった。褒美にこれを取らす」
首をあげたギルは、法皇がその手から美しい指輪を外す姿を見た。
「恐れ多い。労わりのお言葉の数々で、充分でございます」
「構わん」
法皇は、指輪をギルに差し出した。
名工が丹精込めて作り上げた、繊細な透かし彫りの指輪だ。
純度の高い石が埋め込まれており、煌いて見える。
ギルは、震える手でその指輪を受け取った。
我が敬愛する法皇。
まさか、その御方から指輪を賜るとは。
抜き取られたばかりの指輪には、まだそれを身につけていた法皇のぬくもりが残っている。
ギルは両掌で指輪を大切に包み込み、胸に当てて歓喜を噛みしめた。
「この場で身につけてみよ」
法皇の言葉に、ギルは自分の左手の薬指にそれをつけた。
心臓に最も近いとされるその指に通し、法皇への絶対の服従を示して見せた。
「うむ、よく似合う」
満足げな法皇の声。
「恐悦至極に存じます」
ギルはもう、平伏極まってその場を後にした。
震える足取りで、法皇の間を後にした。
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