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第8話

 バーラの後を追って、のんびりと法皇神殿へ昇っていたニネットは、途中ギルに出会った。  声をかけたが、まるっきり無視された。  特に珍しい事でもないので、ニネットは鼻を鳴らしてギルから目を離した。  ん?  そう言えば、ギルはバーラの花束を持ってはいなかった。  また、彼と手を繋いでもいなかった。 (バーラ、ギルに会えなかったのか?)  そんな事を考えたが、すぐに彼の姿を見つけることができた。 「バーラ、お花はちゃんとギルおじさんに渡したのかな?」  ニネットは、よくこう言ってバーラをからかっていた。  20歳を越えれば、おじさんじゃないか、とギルをおじさん呼ばわりしては、怒る少年をからかっていた。  だがしかし。  様子が変だ、とニネットは悟った。  地面に座り込んで、まるで反応しないバーラの姿。  踏みにじられた、花束。 「どうした?」  ニネットはバーラに駆け寄ると、その顔を覗き込んだ。  血の気を失ってしまった頬に、震えている青ざめた唇。  視線は泳ぎ、ニネットも、どこか遠くから見ているかのようだ。

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