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第9話

 バーラは、ショックを受けていた。  優しかった、ギル様。  いつも穏やかに包み込んでくれた温かな存在が、突然手のひらを返したように苛烈な仕打ちを寄越したのだ。  信じられない、信じたくない。  でも、それは悪夢のような事実なのだ。  バーラは、ニネットに言おうとした。 『ギル様に、怒られちゃった。ギル様に、叩かれちゃった』  だが、喉が詰まって声が出ない。  ただ、見慣れたこの顔を前にした時、大粒の涙がこぼれて頬を伝った。 「何も言わなくていい」  ニネットは、その両腕でしっかりとバーラを抱きしめた。  大丈夫だ、と繰り返し声を掛けながら、その髪を、肩を、背中をさすった。

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