9 / 13
第9話
バーラは、ショックを受けていた。
優しかった、ギル様。
いつも穏やかに包み込んでくれた温かな存在が、突然手のひらを返したように苛烈な仕打ちを寄越したのだ。
信じられない、信じたくない。
でも、それは悪夢のような事実なのだ。
バーラは、ニネットに言おうとした。
『ギル様に、怒られちゃった。ギル様に、叩かれちゃった』
だが、喉が詰まって声が出ない。
ただ、見慣れたこの顔を前にした時、大粒の涙がこぼれて頬を伝った。
「何も言わなくていい」
ニネットは、その両腕でしっかりとバーラを抱きしめた。
大丈夫だ、と繰り返し声を掛けながら、その髪を、肩を、背中をさすった。
ともだちにシェアしよう!