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第10話

 糸の切れた操り人形のようだった、バーラ。  次第にニネットの声が、心が通じてきたのか身をよじった。  ニネットの大きな体に細い腕をまわし、服の端を握りしめてきた。  その胸に顔を埋め、ひたすら呼吸を整えていた。  どれくらいの時が経ったのだろう。  ひどく長かったような気がする。  バーラはようやくニネットの身体にすっぽり包まれたその身を動かし、小さな声で、苦しい、と呟いた。  そっとバーラから離れたニネットの目は、優しかった。  そしてバーラをその場に立たせ、芝にまみれた彼の服を叩いて清めた。  踏みつけられた花束を拾って、きれいに整えた。 「これ、お兄さんが貰ってもいい?」 「……うん」  バーラの返事は暗く沈んだものだったが、ニネットは軽やかに、嬉しいねぇ、と歌うようにおどけてみせた。 「じゃあ、お花のお礼をしちゃう。お兄さんと、ケーキ食べに行こうか!」 「……うん」  今は小さな声でしか、返事ができない事は解かっている。  バーラの心を慰めようと、ニネットはその手を取ってカフェへと向かった。

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